1回、ガンマ線やベータ線を出して崩壊すれば、安全な物質に変わるわけではない。再度放射線を出して崩壊するものもあれば、安定状態になっても重金属として害を与えるものもある。
1. キセノン133 半減期約5.2日でベータ崩壊し安定同位体のセシウム133になる。セシウム133は、空気中の水分と反応して 水酸化セシウムになる。水酸化セシウムは水酸化ナトリウムと同じくらい強塩基。
セシウム134、137が減っても安定態のセシウム133は残り、不整脈の原因になる。カリに似た性質は同じだろうから植物を通じて口に入る。
2. 放射性のセシウム137の96%はβ線を出して137mBaへ、4%は安定な137Baへ。137mBaはガンマ線を出す。
セシウム137→137mBa・137Ba、137mBa→137Ba
セシウム134が壊変したバリウム134は安定。セシウム134→134Ba
セシウム137が崩壊してできた137mBaはガンマ線を出す。そして最終的に安定態のバリウムになってもその化合物の多くは有毒。X線撮影時に飲む硫酸バリウムだって害がないわけではないらしい。
硝酸バリウムの中毒の徴候は、嘔吐、下痢、腹部の苦痛、筋肉の震えなどだという。最近、そんな症状をよく見聞きしないだろうか。

3. 放射性銀(Ag-110m) → カドミウム110(Cd-110) Ag-110mの半減期は250日だから、3年、1000日以上経過でほとんどがカドミウムになっている。カドミウムそれ自体の放出分もある。
食品安全委員会の資料に、「カドミウムによるヒトにおける有害性評価」として次のように記されている。
「1940-50年代に、酸性食品や飲料による重篤なひどい吐き気や嘔吐、腹痛を伴う急性食中毒の症例が発生した。
自動飲水器から約16 mg/Lのカドミウム濃度の水を飲んだ後に急性中毒が発症し、急性中毒から比較的迅速に回復したとの報告がある。この事例の場合の急性中毒では、嘔吐を引き起こし、結果として胃腸管内にカドミウムが短時間しか存在しなかったために、吸収されたカドミウム量が極めて限られていたと考えられる。急性カドミウム中毒を経験した人々の追跡調査研究はない。」
また、別の資料では次のように書かれている。福島第一原発事故前に作成されたものだ。
「現在の食生活では食品からのカドミウム摂取が健康に悪い影響をおよぼす可能性は低いと考えられます。」
カドミウム摂取量が増えれば、可能性はぐんと上がるとも理解できる。
これからは、重金属の中毒がありうることになるだろう。急性の重篤な中毒でなくても、慢性のアレルギー症状のようなものならあって当然だ。
キセノンの沈着量に関する資料はないが、キセノン133は、半減期約5.2日でベータ崩壊し安定同位体の 133Cs になるというから、3/12までに出来たキセノン133は、3/21頃にはほぼ4分の3がセシウムになっていた。
都道府県別のセシウム沈着量。この図はセシウム134と137に関するものだが、ここにさらにセシウム133が加わると見ていい。半減期の長いセシウム137と安定態のセシウム133が心筋梗塞などの原因物質であり続ける。
そして、崩壊したセシウム134と137は、バリウムとなり、今度は重金属としての害を及ぼす。セシウムは水酸化セシウムになっているとされるが崩壊した後は水酸化バリウムになるのだろうか。知識がなくて不明だが、仮にそうだとしたら嘔吐や下痢の原因物質になりうる。

参考までにヨウ素の降下量もあげておこう。


こと外部被曝に関して言うなら、空間線量率が下がったということは安心材料だが、化学毒性はその物質がなくならない限り永遠に続く。セシウムの濃厚汚染地帯の農作物はいつまでもリスクがあることになる。
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