[私見]初期被曝の時期の推定: ずくなしの冷や水

2014年04月03日

[私見]初期被曝の時期の推定

茨城7区、栃木4区の人口動態悪化は、いつかはあるだろうと予想していたが、あまりに早くて当惑している。

2011年を通じて3月または4月の死亡数が最も多かった小選挙区のうちから津波被害が大きかったと見られる小選挙区を除いて計算した結果も良くなかった。

2011/3にこれらの地域にお住まいだった方は心配されるかもしれない。とにかく被曝回避に全力を上げてもらうしかないし、それが一番ではないかと思う。キレート剤も使い方が難しいと聞く。

心配しすぎるのは良くないし、その必要もない。甲状腺障害を除けば、同じような被曝をしても疾病を発症するかどうかは、確率的なものとされている。

それに、空気中の放射性物質濃度は、むらが大きく、滞留した時間もいろいろだし、プルームの最も濃厚な部分が地上何メートル上空を通過したかも分からない。

3/13に女川原発で20μSv/h程度を記録しているが、仙台市では1μSv/h程度までしか上がっていない。距離的に近い2地点でも線量率が1桁違うこともある。

濃厚なプルームが通過した時間の個人の生活行動や職業上の活動もさまざまだ。気密性の高い外気と遮断された環境にいるほど吸気被曝の程度は低くなる。

以下は、これまでに私が収集した資料から小選挙区別に、その中の任意の都市を取り上げて放射性物質濃度の高い気流が到来していたと見られる時間を推定してみたものだ。

@ 関東地方のプルーム往来線量数値表
A 気象研究所シミュレーション切取画像
B 初期被曝の推定資料
C きのこが教える汚染地図 (最新版)

@については、測定場所の環境や測定機器によりかなり大きい線量率の差が出ていると理解している。公設MPの公開データは、多くが1時間平均値であり、10分間ピーク値はこれよりはるかに高い。個人が測定したピーク値との差があるのは、測定機器の違いもあろうが、この平均化の過程によるものが大きいと見られる。

それに、特に高い数値は、欠測扱いにしてしまう自治体もある。茨城県の北部では、3/11から3/14にかけて多くのMPで欠測となった。常陸太田市ではこの間、喉が焼けるように痛かったという証言もあるからこの頃に最大の吸気被曝をした可能性もある。

Aについては、数少ない貴重な資料だが、降下沈着を考慮しておらず、相対濃度だけしか分からない。このため、相対濃度の低いところで相対濃度の高いところより線量率の測定値が高かったり、プルームの濃度表示限界以下のところでピーク線量率を観測したりする例が見られ、誤差も大きい。

とにかくデータが絶対的に不足しており、WSPEEDIで1時間毎の地点別空気中濃度を推定するのが最も有効、有益だが、そのような資料が開示されるのを当てもなく待つわけにもいかず、不備を承知の上で推定してみた。

以下、赤字は、2011年3月か4月の死亡数が年間最多を記録した小選挙区青字は、2011/2月から12月の間で3月の死亡数が年間最多を記録した小選挙区

茨城県内
茨城5 日立市 3/15 6〜7時
茨城4  ひたちなか市 3/15 8時
茨城2 神栖市 3/15 7時、3/21 5時
茨城7 古河市 3/15 8時

茨城1 水戸市 3/15 7時
茨城3 取手市 3/15 14時、3/21 9〜10時
茨城6 つくば市 北 3/15 8時、南 3/15 13時

 
北茨城、高萩、那珂、常陸太田、ひたちなか、東海村、つくば北、南については測定記録がある。

だが、前述のとおり、茨城県内が放出源である吸気被曝の可能性は念頭に置いておきたい。震災後に通常時の約10,000倍の放射能を記録とあるから、通常時0.03μSv/hなら300μSv/hもあったことになる。おそらくは気体が主ではないか。

古河市については、つくばや宇都宮市の測定データをもとに推定した。

茨城2区の鉾田市については2011/3/15、7時に5.34μSv/hと高い値を記録している。プルームが海から陸へ押し戻されたときに濃度の高い部分が通過したようだ。茨城2区については、とりあえずこの値で時間を判断した。

鉾田市空間線量率






栃木県
栃木1 宇都宮市 3/15 10時
栃木4 小山市 3/15 9時

栃木2 鹿沼市 3/15 10時
栃木3 那須塩原市 3/15 23時
栃木5 足利市 3/15 9〜10時
宇都宮市は、測定データがある。小山市は古河市の北であり、宇都宮市の時間との中間と見た。

那須方面は、3/15は一日霧雨。夕方から深夜まで1.5μSv/h超が続いた。
足利市は、古河市の西。
鹿沼市は、宇都宮市の西。ほぼ同じだろう。



東京都
東京11 板橋区 3/15 10時
東京12 北区 3/15 10時

東京13 足立区 3/15 10時
東京15 江東区 3/15 10時、3/21 10〜11時
東京17 葛飾区 3/15 9〜10時
東京18 府中市 3/15 10〜11時

東京4 台東区 3/15 9時
東京3 品川区 3/15 8〜10時
東京1 新宿区 3/15 10時
東京6 世田谷区 3/15 10時
東京21 日野市 3/15 12時
東京25 青梅市 3/15 午後、3/16 未明、3/21 午後



3/15早朝に南下したプルームはその後東風の強まりとともに西に向かった。さいたま市から東京、神奈川を縦断したプルームは、かなり強かったと見られる。北区、板橋区のピークは、都内での測定記録が少なく、さいたま市、和光市、新宿区でのピークが3/15の10時台だから同じと見ていいだろう。
東京都の東側は、3/21にも空間線量率が上昇しているが、区別にはよく分からない。東京25区は、3/16の未明にプルームが通過したが、3/16には降雨がなかったようで沈着は3/21かと思われる。

群馬県
群馬1 前橋市 3/15 13時〜3/16 1時
群馬2 伊勢崎市 -
群馬3 太田市 -
群馬4 高崎市 3/15 13時〜3/16 2時
群馬5 渋川市 -

前橋市、高崎市でのプルームの動きは、[私見]初期被曝の時期の推定 補足 仙台・女川で詳しく見た。


新潟県
新潟4 三条市 3/15 19〜22時
新潟5 南魚沼市  3/15 19〜20時

新潟1 中央区 3/16 10時
新潟2 柏崎市 -
新潟3 新発田市 3/15 19〜22時
新潟6 上越市 -

埼玉県
埼玉1 浦和区 3/15 10時、3/15 17時、3/16 6時
埼玉14 三郷市 -
埼玉3 越谷市 -
埼玉9 狭山市 -


千葉県
千葉12 木更津市 3/21 11時
千葉13 鎌ケ谷市 -
千葉4 船橋市 3/15 16時、3/21 10時
千葉6 松戸市 3/21 10時
千葉9 佐倉市 -

千葉1 稲毛区 3/15 16時、3/21 8時
千葉10 成田市 -
千葉11 山武市 3/16 3/23 日平均値
千葉2  八千代市 -
千葉3  市原市 3/15 17時
千葉5 市川市 -
千葉7 流山市 -
千葉8 柏市 3/15 14時、3/21 11時




神奈川県
神奈川11 横須賀市 3/15 6時、3/16 6時、3/21 12時、3/22 22時
神奈川14 相模原市 -
神奈川3  鶴見区 -
神奈川5  戸塚区 -
神奈川7  港北区 -

神奈川1  磯子区 3/15 7時、3/15 12時、3/16 6時、(保留 3/21 12時、3/22 22時)
神奈川10 川崎区 3/15 6時、3/15 19時、3/16 6時、3/21 12時、3/22 22時
神奈川12 藤沢市 3/15 11〜12時、3/16 7時
神奈川13 大和市 -
神奈川15 茅ヶ崎市 3/15 12〜13時、3/16 5〜7時
神奈川16 厚木市 -
神奈川17 小田原市 -
神奈川18 宮前区 -
神奈川2  港南区 -
神奈川4  鎌倉市 -
神奈川6  保土ケ谷区 -
神奈川8  青葉区 -
神奈川9  多摩区 -

宮城県
宮城1 青葉区 3/12〜13
宮城3 名取市 3/12〜13
宮城4 大崎市 3/12〜13
宮城5 石巻市 3/12〜13
宮城6 登米市 3/12〜13

宮城県内は、測定記録がほとんどなく、女川方面が3/13になって間もない頃に、20μSv/h近辺まで線量率が上昇したことが分かっている。



仙台市などもおそらく次の図の気流の流れのときに影響を受けたのではなかろうか。[私見]初期被曝の時期の推定 補足 仙台・女川でさらに検討した。



山形県
山形1 山形市 3/20 20時
山形2 米沢市 3/20 20時
山形3 鶴岡市 3/20 19〜20時

山形は、3/20に襲来したプルームが最も強かったと見られる。



福島県
福島1 福島市 3/15 午後
福島5 いわき市 3/15 4時

福島2 郡山市 3/15 午後
福島3 須賀川市 3/15 午後
福島4 会津若松市 3/15 22時




福島第一原発の南では、3/14、23時大熊町向畑MP0.142mSv/h、3/15、2時20分、福島第二原発MP0.155mSv/hなどの記録があり、いわき市は3/15の未明に飛来したプルームが強力だったと見られる。午前4時台に23.72μSv/h。



いわき市については、3/16の線量率グラフを改ざんして市のサイトに掲載公表したことが発覚している。
日々の雑記帳」から

この図で3/16、19μSv/h近い値が観測されているが、このプルームはその後海上に流れたと見られる。

長野県
長野1 長野市 3/15 22〜23時
長野2 松本市 -
長野3 上田市 3/15 11〜14時
長野4 塩尻市 3/15 11〜14時
長野5 飯田市 -


山梨県
山梨1 甲府市 3/15 15時
山梨2 笛吹市
山梨3 甲斐市
山梨県で吸気被曝がいつ頃強かったのかはよく分からない。2014年降雪の空中写真から甲府盆地の様子はよく分かったが、盆地ゆえにプルームがいつどれくらい地表に降りたかが分からない。甲府は、MPのピーク時。

ただ、富士北麓のきのこの汚染を見ると放射性物質の降下が少なかったとは考えられないが、盆地状の地形ゆえ、標高の高いところを強いプルームが流れた可能性はある。




静岡県
静岡1 葵区 3/15 12時
静岡4 清水区 -
静岡6 沼津市 -
静岡7 西区 -

静岡2 藤枝市 -
静岡3 磐田市 -
静岡5 富士市 -
静岡8 中区 -
富士山の東側と南山ろくできのこの高濃度の汚染が観測されている。静岡県東部の人口動態は良くない。



お断り:MPの計測値と気象研究所の気流のシミュレーションを用いて小選挙区ごとの大気中の放射性物質濃度のピークを推定できるだろうと考えて作業を始めたが、気象研究所のシミュレーションの誤差が大きく、判断しがたいところが多くなった。この記事の内容には、データの不足による誤差が少なからず含まれていることをご承知願いたい。気象研究所がこのシミュレーションを公開したことを高く評価し、精度の向上が図られることを期待する。

(追記 修正予定)
posted by ZUKUNASHI at 17:46| Comment(3) | 原発事故健康被害
この記事へのコメント
安保さん こんにちは
女川原発のMP測定値は女川原発由来ですか。ガタガタに壊れていると言われていますね。
岩手南部の汚染がいつ生じたのかも、私には良くわからないのです。貴殿のブログ拝見しましたが、女川関係の記事が見当たりませんでした。
女川起源と考えたほうが自然な理由を詳しく教えていただけませんか。
Posted by ずくなし at 2014年04月02日 21:29
私には、どうも例の火山学者の汚染地図が納得いかなかったのです。一度、海側に出た放射能が、風向きが変わったことで再度陸側に流れ、宮城県北部から岩手県南部を汚染させた事になっていますが、非常に不自然に感じられたのです。
岩手県南部の汚染がいつ生じたかは、私にもわかりません。
しかし、女川からベント等で漏らしたと仮定すると、あの汚染地図は、すっきりとするのです。

ご挨拶が遅れましたが、いつも非常に参考になるブログ拝見させていただいております。今後のご活躍を祈念します。
有難う御座います。
Posted by 安保隆 at 2014年04月02日 23:44
広域の気流の流れについては、気象研究所のシミュレーションなどを参照したほうが良いでしょう。
関東を茨城から静岡へ流れたプルームの例でMPの上昇時刻から計算すると平均速度は20km程度出ています。海上ならもっと速いでしょう。
Posted by ずくなし at 2014年04月03日 09:40
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