セシウム、ヨウ素以外の核種も対象とした土壌調査としては、米国によるものが最もサンプル数が多い。この調査結果から、全ベータとストロンチウム90の比を求めてみた。
計算手順を追って結果を示す。
@ 米国による日本国内の土壌調査結果から、全ベータとストロンチウム90の検出値のあるサンプルを抜き出す。91地点となった。単位はuCi/g。
A 91地点について、福島第一原発からの距離が近い順に並べ、全ベータの値をグラフにした。当然のことながら、福島第一原発からの距離が近いほど全ベータの値は高い。土壌の採取時点は2011/4/7がほとんどだが、福島県内の調査地点については、3/27、3/28、3/29もある。

B これらの地点について、ストロンチウム90の値を示すと次のとおりで距離に応じた傾向はつかみがたい。マイナスの値があるが、これはバックグラウンドに比して値が小さい場合にこのような表記をするというから、元の数値に一律 0.0000013を加えて、正の数に変換する。


どうも近いからといって、直ちに値が高くなっているようには見えない。
C 正の数に変換したストロンチウム90の値を全ベータの原数値で割る。

ストロンチウム90の値は距離が離れても大きく減少してはいないが、全ベータは減少しているから「ストロンチウム90/全ベータ比」は距離が遠くなると、値が上がるという結果が得られた。
ストロンチウム90は、福島第一原発事故前から土壌中に検出されていた。したがって米国調査で検出されたストロンチウム90のうちどれほどが福島第一原発事故によって放出された分なのかは分からない。
だが、ストロンチウム90の原数値を見れば、福島第一原発から離れたところでも相応に検出されていることには注意が必要だ。神奈川県下の米軍の家族が早々に逃げ出したのは、セシウムももちろんあるが、ベータ線源を警戒したのだと私は判断している。

そして、「ストロンチウム90/全ベータ比」が遠隔地よりも
福島第一原発事故で放出されたストロンチウム89は半減期が50.52日だから3年近く経過した現在では、まず検出されない。だが、同じ量のストロンチウム89とストロンチウム90が体内に入れば、これまでにカラダが受けた放射性線はストロンチウム89によるものの方が格段に多い。
白血病多発の原因の相当部分がストロンチウム89によるとの見方も成り立ちうる。
次は、上と同様にストロンチウム89について計算したもの。
元の数値に一律 0.000005を加えて、正の数に変換。

ストロンチウム89/全ベータ比

上の結果からは、ストロンチウム89、90の拡散と沈着は、セシウムとは比較にならないほど広く薄く撒かれているように見えるのだが、私の誤解だろうか。
悪意の専門家は、ストロンチウムやプルトニウムは重いので遠くへは飛ばないと言っていたように記憶するのだが。
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付録
米国の調査試料は、米国側が採取したものと、日本政府から提供されたものがある。採取日は大半が2011/4/7だが一部福島県内のものは2011/3末。これらの試料は、gamma spectroscopy(γ線エネルギー分析)と比例計数管を用いて測定されたが、測定日が不明。試料の数が多く、測定に時日を要したものと思われ、ヨウ素の割合が異なっている。
調査地点間の比較を行うには、福島第一原発に近い地点ほど短寿命核種が多いと見られるから、それらを除外して行ったほうが良いのだろうが、全ベータも短寿命核種の減衰に伴って大きく減ることから減衰を考慮することも難しい。
次は、グロスベータの大きい順に調査地点を並べたもの。栃木県が上位に来ているが、その理由は分からない。


