福島第一原発の状況悪化を警戒する 11 なぜ汚染水対策に国費投入なのか: ずくなしの冷や水

2013年08月08日

福島第一原発の状況悪化を警戒する 11 なぜ汚染水対策に国費投入なのか


2013/8/7、福島第一原発の汚染された地下水が海に流出している問題で、日本政府は国費を投入して汚染水対策に乗り出す方針を固めた。毎日新聞は、「汚染水対策は東電の負担で進めてきたが、海洋流出が止まらないため、国も乗り出すことにした」と書いているが、海洋流出が止まっていないことは、2年も前から公然の秘密だった。東電が事実を隠し、マスコミもそれに加担したために公に論じられなかっただけだ。

この時点でなぜこれが決まったのだろう? 私は、米国からの圧力で汚染水流出対策を強化しなければならなくなったのだと思う。

米国は、魚食でないから海洋汚染に関心がないなどと言うことは事実に反する。海洋生物や海洋環境に関する米国の研究機関のレベルは高く、日本などは足元にも及ばない。太平洋側の北部では、漁業は輸出産業だ。

米国は早くから太平洋の放射能汚染の広がりについて詳しく調べているはずであり、日々、汚染が強まり、米国領海域まで強く汚染が及ぶことを憂慮していると思う。

2012年秋に自民党に政権交代してから、米国の要求はよりはっきりしたものになっただろう。それを受けて、東電に指示が行き、汚染水の海洋流出を抑制する試みが始まった。これまで進められてきた海側護岸沿いの遮水壁の造成工事がそれだ。

この工事自体、隣の取水口から汚染水がどんどん流出しているはずなのに、なんでここだけやるのか不思議でならないが、とにかく汚染水の流出を減らすために講じられる措置はやってみると言うことだったのだろう。

東電の担当者は、遮水壁の工事を前倒しにすることについて、他の工事と重機使用の競合があると規制委員会のワーキンググループで述べており、東電の内部では汚染水の海洋流出抑制対策は、特に高い優先順位を与えられていない。

それに場所的にも制約が多い。次の写真は時事通信が2013/8/5に撮影したものだが、タービン建屋の海側はこんなに機材や資材で埋まっている。



東電の担当は、どこかからせっつかれて困難な作業をやってきたのだろう。だが不幸なことに、遮水壁の設置が進むにつれて地下水位が急速に上昇してきた。これまで漏出水が通っていた地下の土中を遮断すれば当然水が滞留するわけだが、こんなに効果があるとは想定していなかったのか、あるいは遮水壁の工事と並行してなんらかの状況の変化があったのかのどちらかだ。

地下水の遮断は出来たものの、たまった水はポンプで汲み上げタービン建屋などへ戻すことになった。もともと、タービン建屋や原子炉建屋から出てきた可能性の高い汚染水だから、海の瀬戸際で回収して元に戻すと言う目的なら大成功だと言える。

結局、海の瀬戸際の土中に遮水壁を設けるという手法では、汚染水の海洋流出を止めることはできないことがわかり、他の手段を考えざるをえないが、構内にタンクやクレーンなどが所狭しと並んでいる状況から、これらを遠巻きに囲む形で別の遮水壁を作らなければならない。今度は、凍土による遮蔽だと言う。零度以下の液体を配管に通して凍結させるわけだから管理が大変だと思う。また、トラブル多発だろう。

いずれにしても、工事の規模が大きくなり、費用が嵩むからできないとの態度の東電を押さえ込むために、費用の国負担が出てきたのだろう。財務省は抵抗しただろう。東電が半ば国有化されたとはいえ、福島第一原発の収束、廃炉に何十兆円かかるかわからないのに次々と国が費用を出すわけには行かないと考えるのが普通だ。

まあ、そういう懸念の拡散防止の舞台装置が「総理指示」なのだろう。もちろん、「総理指示」が連発されれば、とめどなく国費が投入されることになる。

私は、ほかにも地下水流出対策の強化を余儀なくされた要因があるのだろうと見ている。

福島第一原発では、すでに2年以上壊れたバケツに大量の水を注ぎ続けた結果、辺り一面が水浸しになっている。用地造成時から原子炉建屋のある地面ほどの高さでは地下水が多かったと言う。すでに海に近いところでは地下水位がOP2.5mくらいまで上がってきており、タービン建屋では3.1mくらいだから、山側に近い原子炉建屋辺りではもっと高いはずだ。

遮水壁の工事現場に近いところでは、水溜りが多いようで、そこに足を浸けてしまった作業員が被曝を心配していると言う。水溜りは、あちこちに見られるようで、次のタンクが並ぶ地域でも、単に水はけが悪く雨水が一時的に溜ったのかどうか不明だが、水溜りがある。

投光器の脇には三角コーンが置かれ、水溜りの所在に注意を喚起しているようだから、一時的な水溜りではない。

地下水位が上がると水溜りが増え、作業効率が低下するし、被曝事故も増える。そして、構造物には浮力がかかり、地震のたびに揺れは大きくなり、傾くことも予想される。原子炉建屋やタービン建屋の地下に溜った水を抜いたら、その危険性は高まるだろうから、水を抜くことも難しい。今は、有力な汚染水貯留所だからその水を抜くことなど考えられないが。



原子炉への注水は止めるわけにはいかない。政府や東電は地下水の流入が汚染水の海洋流出の主因のようなことを言っているが、地下水がわざわざ建屋の中の水溜りに入り、汚染物質をもらって外に流出してくるわけではあるまい。地下水が汚染されるとすればメルトスルーした核燃料から汚染物質をもらっているはずであり、それ以上に格納容器内に注がれた水の汚染が大きいはずだ。

格納容器の穴をふさぐことなどできないから核燃料を冷やすためには毎時1トンもの水を注入し続けなければらない。

安倍晋三首相は2013/8/7、首相官邸で開かれた原子力災害対策本部の会議で「東京電力に任せるのではなく、国としてしっかり対策を講じていく」と述べ、東京電力や関係省庁、福島第1原発事故処理を監督する茂木敏充経済産業相に対し、地下水が汚染された原因を解明し、海への汚染水流出を防止するための対策を強化するよう指示することを明らかにしたと伝えられている。

地下水が汚染された原因など明らかではないか。「福島第1原発事故処理を監督する茂木敏充経済産業相」にどれだけやる気があり、責任を負うつもりがあるのか、私は疑問に思う。

福島第一原発事故対策は、これからも停滞、迷走するだろう。そして、やはり怖いのは大きな地震。建屋が傾いて、ひびの入った格納容器から湯気が立ち上るのが垣間見えるようなこともあるのかもしれない。

・・・・・・

こんな記事が見つかった。

WSJ 2013年 8月 07日 11:55 JST
福島第1原発、汚染水封じこめで苦闘 福島第1原発、汚染水封じこめで苦闘
資源エネルギー庁の新川達也・原子力発電所事故収束対応室長は7月の記者会見で、このやり方では地下水の流れを変えてしまう恐れがあると述べた。また、水が大量にたまり、地盤を軟らかくして、原子炉建屋を倒壊させる可能性があると指摘した。東電は水が染み出している公算が大きい建屋内のひびをロボットを使って修理するといった方法も試してみるべきだとしている。

WSJの動画から
posted by ZUKUNASHI at 12:02| Comment(0) | 福島原発事故
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