
上の図の下部拡大図。

次に、核種の多様性を見るために、各調査地点のセシウム137の実測値を1と置いて、他の核種がこれに対して何倍になるかを見る。縦軸の単位は「倍」だ。千葉市稲毛区は日本分析センターの測定データだがTeについては記載がない。横須賀市稲岡町についてはTc99mの値が3360倍になるので表示していない。大気の測定結果は2011/3/15か、またはその直後のものであり、Te132がI131と同程度に検出されている。福島市飯坂町のデータは、このグラフから見ると、福島第一原発以南の関東地方のパターンを示しており、試料の扱いになにか手違いがあったのではとの疑いを禁じえない。
関東では、ヨウ素がセシウム137の5倍程度もあるところが多く、特に千葉市稲毛区といわき市のヨウ素の比率が高い。大気調査では表示がない千葉市稲毛区を除いて多くの地点でTe132がヨウ素と並んで高い濃度で検出されている。このほかにもデータはないが、キセノンなども高い濃度で測定されており、関東での初期被爆は、セシウム134、137に加えてヨウ素、テルル、キセノンなどに起因していると見られる。

既出の記事で書いたが、関東にはさまざまな核種が降下沈着しており、しかもところによって並外れた沈着量を示している。前橋市の2011/3/16の降水から検出されたテルル129の67兆ベクレル/m2はその最たる例だ。横須賀市稲岡町で検出された膨大なTc99mもそうかもしれないし、埼玉県熊谷市のストロンチウム89の高い値も同様にとらえることができる。
次の図は上の図のいくつかの地点について実数値で比較したものだ。関東のセシウム濃厚汚染地帯が外れているため、福島県中通りに比べればセシウムの降下沈着量は確かに格段に低い。だが、上の大気調査の結果で分かるように初期のプルームは極めて強かった。そして、その後も、健康障害への影響もよく分からないさまざまな核種が土壌中に残存している。

関東に住む住人も、人類初の経験となる放射能複合汚染の中で生きていかなければならない。
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2011/3/15の大気中の放射性物質濃度