放射性物質は気体、微粒子、粒子、そして破片で飛んで落ちた 2: ずくなしの冷や水

2013年07月10日

放射性物質は気体、微粒子、粒子、そして破片で飛んで落ちた 2

「放射性物質は気体、微粒子、粒子、そして破片で飛んで落ちた 1」から続く。

お断り:地名は、原データに付された緯度経度からネット上で提供されているサービスを用いて一括変換している。このため、特に都市部については正確な地名が表示されず近傍の地名が表示されているものがあるのでご了承の上ご覧いただきたい。

1.米国調査によるセシウム134とセシウム137の合計値の分布。だいたい文部科学省の空中測定マップに見合っているだろう。だが、そうなると、問題が出てくる。東京都と神奈川県にあるオレンジと黄色のマークは、どうしたのだろう。

私の見解では、これらは検出の間違いではなく、このように高いところが東京都と神奈川県にも存在することを示す。東京都と神奈川県に降下沈着した放射性物質は、2011/3/20から3/21にかけてのものが多くを占めるが、東葛飾のように強い降雨で集中的に降下、沈着はしなかったものの、時間をかけて降下した。個人が行った土壌調査でも高い値が出ているところもある。東京都と神奈川県のセシウム汚染は決して少なくない。


2.前の記事で見たが、ストロンチウム89については、埼玉県熊谷市原島の検出値が那須塩原市鍋掛や浪江町大字赤宇木字清水を上回っている。熊谷市の降下沈着は、2011/3/15の乾式沈着が多いと見られ、プルームが関東平野を覆っている時間が長かった。埼玉県では、熊谷市のほか、久喜市、鶴ヶ島市でも相対的に高い値が出ており、検出の間違いではないだろう。プルームの含んでいた放射性物質は、幅、高さの両面で不均一でむらの大きい状態であったと見られ、たまたま濃度の高い部分が差し掛かって降下したとみるべきだろう。地形的な問題は考えにくい。


3.プルームが運んできたすべての放射性物質について言えることだが、プルームの含んでいた放射性物質は、幅、高さの両面で不均一でむらの大きい状態であったと見られることから、同じ場所、時間にプルームを呼吸によって吸い込んだ複数の人の間でも、吸い込んだ放射性物質の量が異なることがありうる。特に、粒子状のセシウムについて、より大きな粒子を吸い込めば内部被爆は大きく、健康被害の出方も異なってくる。

キセノンやヨウ素が気体の形状で飛んでいるし、気体でないヨウ素は微粒子だったのではないか。ここでの微粒子と粒子の使い分けは定義に基づくものではなく、微粒子が10個、100個と要するに多数集合した状態を粒子としている。

高辻俊宏長崎大学准教授は、福島県いわき市志田名地区で試験的に栽培、採取された米からセシウム357Bq/kgが検出されたため、汚染の強い米粒を特定する作業を行い、最後に残った米3粒のうちひと粒が2.9Bq、残りの2粒は0.0048Bqであったとしている。放射能の弱い米に微粒子が入っていて、放射能の強い米には粒子が入っているというそんな感じでとらえている。

放射性物質が破片で飛んできた例は、双葉町や楢葉町でそのような破片が見つかっている。楢葉町の物体は燃料棒の破片ではないかとする声もある。

4.セシウム134+137の値による上位検出地点とヨウ素131の上位検出地点を比較すると、東京神奈川を初めとする関東の調査地点がヨウ素でより上位に来ている。このことは、北ないし北西に向かったプルームよりも南に向かったプルームがセシウムに比してより多くのヨウ素を含んでいたことの現われと考えられる。

この点を確認するために次の図を見て欲しい。各地点のヨウ素131のセシウム137に対する比を算出し高いものの順に並べたもの。神奈川県横須賀市稲岡町、逗子市池子三丁目、横浜市中区滝之上の3箇所は、異常値と判断し除外した。

福島県浜通りの福島第一原発以北、福島県中通り、会津地方、山形県、宮城県を黄色でハッチした。この黄色に塗った地点ではセシウムに対するヨウ素の割合が低い。つまり、福島と関東とでは、セシウム汚染の程度が同じならヨウ素汚染は関東のほうがはるかに高いことになる。関東では初期のプルームによる内部被曝が大きいと見られ、関東の住人にも福島における甲状腺異常発生率に近い割合で甲状腺の障害が出てきているはずと強く危惧する。



5.テルルも福島第一原発の北と南で濃度が異なる。次の図は、テルルの3つの核種、Te-129、Te-129m、Te-132のkg当りベクレル数を合計してクラス分けし地図に落したもの。1万Bq/kg以上がA、100Bq/kgから2500Bq/kgがB、10Bq/kgから100Bq/kgがC、0Bq/kgから10Bq/kgがD、Bq/kg数がマイナスのものがE。赤が特に高く、青も相対的に高い。そして、赤は、楢葉町と福島市、それに横浜市中区滝之上にあるだけで、青は、東京都、神奈川県、茨城県、栃木県のみに分布する。逆に言えば、福島市を除けば福島第一原発以北には、青以上の点は一つも分布しない。



この分布は、テルルがいつ運ばれてきたかを物語る。2011/3/15の日中だ。「原発はいますぐ廃止せよ」の2013-04-02 の記事によると、2011/3/16に群馬県が前橋市で降水を分析した結果、テルル129が67兆ベクレル/m2検出された発表されていたため、担当の群馬県衛生環境研究所に電話照会し誤りでないことを確認したとされている。3/20以降のプルームによるものではない。

なお、米国による土壌調査では、群馬県甘楽郡下仁田町大字下小坂で 36Bq/kg 、沼田市堀廻町で 12Bq/kg、前橋市富田町で 5Bq/kgが検出されている。

2012/5に東京電力が発表した「福島第一原子力発電所事故における放射性物質の大気中への放出量の推定について」によれば、2011/3/14の夜半から3/15にかけて2号機から数次にわたり大規模な放出があったとされており、起源は2号機と見られる。もちろん、3/15朝の4号機の爆発により放出された分もありうるが、どれくらいどんな放射性物質が出たのかは推計が出来ない。

関東のセシウムに対するヨウ素の割合が高いのも、3/15に関東を襲ったプルームの起源が影響しているのだろう。そして、ヨウ素、テルルなど半減期がごく短い核種が多いということは、放射性物質の放出源と見られる2号機で爆発直前まで臨界状態にあり、次々と核生成物が作り出されていたということに他ならないと思われる。
posted by ZUKUNASHI at 22:35| Comment(0) | 福島原発事故
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。