最初に、私が関心を持つアルファ線源は、ウラン238、プルトニウム239、プルトニウム240、アメリシウム241。ベータ線源は、ストロンチウム89、ストロンチウム90、亜鉛65、ジルコニウム95。言うまでもなく、ヨウ素、テルル、セシウムもベータ線を出すが、こちらはガンマ線で所在が推定できる。
私の懸念は、MOX燃料とその燃えカスが落ちたところは、襲来したプルームが弱くても、湿式沈着になったこともあり、プルトニウムなどを相対的にたくさん落していったのではないかということだ。
次は、米国による土壌調査結果から、Gross AlphaとGross Betaの値を県別に集計したもの。東京都についてはGross AlphaとGross Betaの値が示されていない。
このグラフで、栃木県のGross AlphaとGross Betaの値の高さが目に付く。特にGross Alphaについては、福島県を上回っており、Gross Betaでも最高値は福島県下に勝る。前に掲げた地図て分かるように、栃木県の県北が特にストロンチウムなどが多くなっており、これは2011/3/15の深夜から未明にかけて襲来したプルームが落としていったものだ。

2011/3/15の早朝は福島第一原発から南に気流が流れたが、夜には東風に変わり、プルームは阿武隈高地を越えて福島中通りと栃木県県北に流れ込んだ。

米国は、どんな配慮をしたのか不明だが、福島県の中通りについてはデータを示していない。那須町の空間線量率は、3/16の午前0時台に 1.74μSv/hをつけている。
栃木県に次ぐのは福島県を除けば宮城県だ。仙台市の南に接する宮城県名取市については、米国が詳しい土壌調査を行っており、横須賀市と同じような核種構成になっている。宮城県は、汚染状況に関するデータを隠蔽しており、実態が分からないが、特に県南と北部は強い汚染がある。
そして、山形県は茨城県と同程度で千葉県を上回る値が出ている。千葉県は、東葛飾の調査地点がなく、米国がなぜ調査しなかったのか、調査しても公表しなかったのか不明だが、山形県はGross AlphaとGross Betaともに千葉県を上回っている。
山形市の空間線量率に関する既出のグラフでは、ピークがせいぜい0.13μSv/hだが、那須町のピークは1.7μSv/hを越えている。簡単にいうと、那須町には山形市より10倍以上ガンマ線が強いプルームが到来し、各種の放射性物質を落していったが、山形ではその10分の1程度の強さのプルームで、場所によっては栃木県に並ぶGross AlphaとGross Betaの値が検出されている。

千葉県の土壌汚染は主として3/20以降のプルームによるものだし、神奈川県もそうだ。空間線量率のピークがそれほど高くなくても3/20以降のMOX燃料系の放射性物質を含むプルームは、いろいろな放射性物質で土壌を汚染した。
ヨウ素やセシウムは、安価な放射能測定器でも存在を察知することができるが、アルファ線源、ベータ線源の核種は察知することさえ困難だ。それに、アルファ線源、ベータ線源は、気化温度が高かったりするために、高い放射線を出す塊が見つかったりする。楢葉町の井出川河口付近で発見された小さな物体は典型だ。セシウム等から出ていると見られるγ線の強さが105μSv/h、ストロンチウム等から出ていると見られるβ線の強さが3,400μSv/h、3.4ミリシーベルト/hだから脅威だ。
次の図は、米国調査によるSr-Total値の県別の分布。調査点数が少ないためか、各県ともにぽつんぽつんと飛びぬけた値が見られる。そういうところで生産された農産物などのストロンチウム汚染は激しくなる。植物は、ストロンチウムとカルシウムをまったく識別できないようだという。

今、関東で生じている甲状腺異状等の健康被害は、その主原因が3/15ないし3/16に襲来した強力なプルームを吸い込み内部被曝したことによる。なぜなら、3/15の午後に東京を脱出した母子にも甲状腺関係の健康被害が生じているからだ。
被曝、特に内部被曝で怖いのは、アルファ線源、ベータ線源を体内に取り込み内部被曝をすることだ。体外排出は難しく、時間の経過とともに、がんになる。セシウムは減衰してきているが、アルファ線源、ベータ線源の核種は半減期が長い。汚染地域にとどまり、汚染地域で生産された農産物を食べ続ける限り、これらの核種による内部被曝のリスクは否応なしに高まっていく。
アルファ線源、ベータ線源がどこにどれだけ落ちているか、まだまだ分からないが、個人が都内でγ線、β線、α線を測定した結果を見ると、汚染は強い。
関東は、子どもを育てる環境ではないと、改めて強調したい。
米国なら廃棄される家財の中で暮らす日々
米国による土壌調査結果から