この先 空間線量率はあまり下がらなくなるだろう: ずくなしの冷や水

2013年06月10日

この先 空間線量率はあまり下がらなくなるだろう

千葉県山武市が市内の企業の協力で公表している空間線量率は、福島第一原発事故前の2011年3月初めからのデータが揃っており、空間線量率が長期間経過したらどう変化するかを見るのに都合が良い。

まず、2011/3/11から2011/6/30までの日平均。事故後間もなくは、ヨウ素など短寿命の核種が多く、2011/3/16の0.337μSv/h、3/23の0.295μSv/hをピークにしてその後は減衰している。

目盛りの刻みを小さくしてみると、2011/5〜2011/6には、なお放射性物質の降下が続いており、6月になってもまだ安定していない。

2011/7に入ると、空間線量率の変化が落ち着いてきたと判断し、減衰曲線を当てはめて理論値と実測値との乖離を見てきたが、大きな思い違いをしていた。

減衰曲線は、2011/7/1の実測値0.109μSv/hを出発点とし、セシウム137と134がほぼ半々との前提で日次の減衰分を差し引くことで計算したが、0.109μSv/h分がすべて福島第一原発事故により放出された放射性物質によるものではない。この事業所では、福島第一原発事故前の空間線量率が0.078μSv/hで安定的に推移していたと見られることから、2011/7/1の時点では、実測値0.109μSv/hから0.078μSv/hを差し引いた0.031μSv/hが福島第一原発事故により嵩上げされた空間線量率であり、減衰はこの部分だけを対象とすべきだった。

当初設定した減衰曲線が、8ヶ月間ほど実測値の変化とぴったり合っていたために精査しなかったが、次の図は誤りだ。減衰曲線の低下度合いが続くと、数年で0.078μSv/hを割り込んでしまう。


今度は、数十年先まで減衰状況を試算し確認することにした。次の図が、2011/7/1時点での0.031μSv/hが時間の経過とともにどのように下がっていくかを試算したものだ。今は、2011/7/1から約2年経過しているから横軸の2の目盛りにある0.0215辺りだ。

このグラフでは、セシウム134と137の割合を変則的なものとしているが、これは減衰曲線の当初低下分を大きくしたかったためだ。実測値との適合状況のところでまた述べる。

この試算でいくと、2011/7/1現在の放射線強さが6分の1になるのは、約40年先になる。セシウム134は20年でごく少なくなり、セシウム137は30年で半分だから、40年で約4割。全体の5分の3がほぼ消え、5分の2が0.4に落ちるわけだから、全体では当初の0.16倍、約6分の1になる。

概念的には、こんな形で空間線量率が低下し、事故前の0.078μSv/hに近づいていくのだろう。

ここで減衰曲線と実測値を照合すると次のようになる。あまりに当てはまりというか、照応性がなくうめいてしまう。

なぜこんなに適合性が悪いのだろう。減衰曲線の当初低下分が大きくなるようにセシウム134と137の割合をいじってもこれだけの乖離がある。

考えられる要因を挙げてみる。
@ この事業所のMPは、水はけの良い、放射性物質が付着、沈着しにくい環境に置かれている。このため、事故後1年間の放射性物質の流出が速やかだった。

A この事業所は、放射性の薬品を扱っており、屋外の汚染が強くなったため除染を行った。

B この事業所は、密な林に囲まれており、常緑樹の混じった広葉樹林と見られるが、林の季節変化に伴う周辺からの放射線の変化。影響は否定できないだろうが、こんなに大きく変動するとは思えない。

C 放射性物質の追加的な降下沈着。平成24年の春に見られた空間線量率の横ばいないしは上昇は、追加的な降下によるものだろう。

D セシウムよりも寿命の短い核種の影響。放射性物質は次々に壊変してベータ線やガンマ線を出す。半減期5.27年のコバルト60はベータ崩壊をしてニッケル60になり、ニッケル60はガンマ崩壊だ。半減期が244日の65Zn亜鉛65は、ガンマ線を出す。亜鉛65が多ければ、減衰が早いから都合が良いが・・・。

なぜ空間線量率がこんな動きをしているのか、要するに分からないということなのだが、放射性物質の追加的な降下があること、ごく初期にはヨウ素などの影響が大きく空間線量率がはね上がったが、その後に残ったのはセシウムだけではないことは間違いないのだろう。

この観点からセシウムの減衰による空間線量率の低下を考えるなら、次の図のように、他の核種の存在を前提に低いところから減衰曲線を描くのが妥当なように思える。


その場合、この先のセシウムの減衰による空間線量率の低下は、極めて限定的になることだろう。
posted by ZUKUNASHI at 17:57| Comment(0) | 内部被曝防止
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