中高年男性の強い内部被曝を示すデータはいくつかある。
@ 日立市十王町の男性、腹部に放射能測定器を当てて測るという簡便な測定方法だが、衣類をたくし上げての計測で0.16μsv/hから0.86μsv/hへ上昇。差し引き0.7μsv/hは土壌調査なら3千Bq/kg(第五階層)に相当する水準だ。
A いわき市で、放射能を全く気にしない生活をしていた人が尿検査をしたら500Bq/kgも出た。体内には尿に含まれるセシウムの100倍も溜まっているとされるから、検査を受けた方はカラダ全体で5万Bq、体重70kgとして700Bq/kgのセシウムが蓄積している可能性がある。700Bq/kgは土壌調査では第三階層に相当する。放射線管理区域の基準を少し超えたところだ。
B 2011/7/14、二本松市が市民の内部被曝に関する独自調査の結果を発表。最高は63歳男性の預託実効線量(70 歳までに受ける被ばく線量の総和)0.252ミリシーベルト。この値の評価については、1mSvを超えていないから心配ないとの考え方もあるし、いろいろある。この預託実効線量を体全体のベクレル数に換算したいが、方法が分からない。
C 西東京に住む人が、北海道がんセンターで、ホールボディカウンター検査を受けたところ、セシウム137が868bq、セシウム134が6,373bq、計7,241Bq検出されたという。ご本人の話では、「北海道に来て一番ビックリしたことは、震災以来続いていた下痢が止まった」と。体重70kgとして103bq/kg。第一階層の高い方に相当。
D 週刊朝日の「談」が報じた福島で40日間現地取材をしてきた記者の事例では、広島大学でWBC検査を受けたところ、セシウム137が1,642ベクレル、134が462ベクレル、合わせて2,104ベクレル検出されたと。体重70kgとして30bq/kg。測定の時点が早いので蓄積量も多くない。第一階層に相当。
それぞれ測定方法、測定指標が異なるので比較は難しいが、日立市十王町の男性が飛びぬけて高く、次いでいわき市の尿検査の男性(子どもの尿検査結果では1Bq/kgに達することは多くない)、次いで西東京に住んでいた人、週刊朝日記者の順と見てよいのではなかろうか。
二本松市の男性は、いわき市の尿検査の男性とほぼ並ぶのではないか。そして、注目されるのは西東京に住んでいた人の例だ。この方は内勤の仕事らしいが、103bq/kgで心筋に障害が出る危険ラインを大きく超えている。
これらの事例を空中測定マップの階層区分と比較すると、二本松市が第四階層、いわき市が第三階層から第四階層、日立市十王町が第二階層から第三階層、東京西部が第一階層になっている。
二本松市やいわき市の方が、その後内部蓄積の状況がどう変化したかは分からないが、何も回避努力をしていなければさらに蓄積が進んだだろう。日立市の方は、どうも水道水に原因があるらしくどんどん蓄積が進んだもののようだ。
汚染地域で地域密着型の暮らし方をしていると、水や食べ物を通じて環境の放射性物質濃度に接近し、さらにはその人間の体の中でも生体濃縮が進む。被曝回避には、脱出が決定的な効果を持つ。どうしても、今すぐ移転できないのなら、地域の自然と一線を画して暮らすしかない。
鳥や昆虫が生き残れない環境での地産地消は、きちがい沙汰だ。次に汚染が進んだら、全面マスクで大気とも一線を画す時期がやってくる。
