
出生死亡比率の推移を見ると次のとおり、1986年の1.4前後から15年後の2001年には0.505まで低下し、その後回復途上にあるが、未だに大幅な自然減の状況が続いている。

出生死亡比率が1なら出生と死亡がバランスして人口自然増減はゼロ、1を下回れば自然減となる。次は出生死亡比率から1を減じた値を示す。

上の二つのグラフに加えた二次式の近似曲線は、あてはまりが良い。人口推計をそのような関数を用いて行っているのかもしれないし、放射能による健康被害の人口への影響が長期間にわたって総体としてそのような規則性を示すということなのかもしれない。
もし、後者が言えるとすれば、その規則性を日本に当てはめてみれば将来的な人口動向が推定できる。
そこで、出生死亡比率を用いて推計を行った。上の近似式を用いて原発事故からの経過年数に応じた出生死亡比率の低下度合いを設定し、これを日本の出生死亡比率に当てはめる。
試算の前提
1. 福島第一原発事故の被災が顕著な地域として東日本の16都県を対象とする。岩手、秋田から神奈川、山梨、静岡、長野、新潟まで。
2. 2011年の人口と出生死亡比率は、津波被害の影響が大きいので2010年の人口と出生死亡比率を用いる。
3. 2010年の16都県の総人口は、58,851千人、出生死亡比率は0.9199、これに対応する自然減数は42,500人。
16都県に適用する出生死亡比率の変化は次のとおりだ。

毎年の人口自然減数と累積人口減数。毎年分が茶色の棒グラフで目盛り左、単位千人、青の線が累積数、目盛り右単位同。

試算結果からは、事故後15年を経た頃に毎年の人口自然減が36万人程度でピークをうち、その後自然減が減っていくものの累積では人口減が続くという見通しになった。
ここでは毎年の自然減が、翌年以降の自然減に与える影響は考慮していない。母数が減っていくわけで当初の出生死亡比率に対応する自然減数から計算した数よりも実際には少なくなると考えられるが、15年目辺りで累積減少数は400万人程度、当初総人口の6.8%程度だからこの計算では無視した。
総人口の推移を示すと次のグラフになる。5年後までの累積自然減79万人程度。6年後から10年後までの自然減合計141万人程度。ウクライナでは1986から15年間に総人口が5%減少している。この試算では日本では15年間に6.7%の減少見込みとなっており、減り方が大きいが、ウクライナはチェルノブイリ事故の時点では自然増の状況でそれがなお数年続いたのに対して、日本は福島第一原発事故の時点ですでに自然減であったことによるものだ。

日本は団塊の世代の人口ウエイトが高く、60歳以上で3,942万人、日本の総人口の31%を占める。これらの高齢者のうちこの先10年以内に亡くなる者の割合は、少なくとも被災地域では他の年齢階層に比べて高くなるだろうから16都県では高齢者も減り、新生児も減り、残った人たちもほぼ例外なく放射能に起因する疾病に悩まされている状況が出てくるだろう。
一方、福島第一原発事故による被災の少なかった地域では高齢者も16都県に比べれば長生きできるだろう。だが、16都県の人口減、生産年齢人口の体力、健康状態の悪化によって、税等公的なサービスの負担は被災の少なかった地域にずしりとのしかかる。
西日本に住む人が、被災地域の健康問題を他人事と受け止めるのは大きな間違いだ。もう一度、シビアアクシデントが日本のどこかを襲う危険は、原発再稼動が進めば急激に高まり、第二のFUKUSHIMAの悲劇が生ずることは避けれないのだから。