衆議院チェルノブイリ原子力発電所事故等調査議員団報告書(2011/10): ずくなしの冷や水

2013年01月04日

衆議院チェルノブイリ原子力発電所事故等調査議員団報告書(2011/10)

木下黄太のブログ、2013/1/1の記事に『チェルノブイリの長い影〜チェルノブイリ核事故後の健康被害』と題する研究結果の要約日本語訳が紹介されている。

衆議院の調査団が2011/10/5から13日までウクライナ、オーストリア、フランスを訪問し、その報告書が衆議院のサイトに掲載されていることははじめて知った。

衆議院チェルノブイリ原子力発電所事故等調査議員団報告書

木下氏は、この中に付属資料として置かれている「チェルノブイリの長い影〜チェルノブイリ核事故後の健康被害」の通読を強く勧めている。なお、まっちゃんのブログの2013/1/1の記事でもこの報告書を取り上げている。なお、これは衆議院の報告書であり、政府は関係がない。

『チェルノブイリの長い影〜チェルノブイリ核事故後の健康被害』

序文から一部抜粋

2005年9月の国連報告書は、放射線の影響への理解に大きく貢献している世界各国の科学者らが実施した、数多くの貴重な査読済み科学研究調査の結果を考慮したものではなかった。この考慮されなかった調査結果は、放射線の影響に関する予防措置やリハビリテーションおよび治療を勧告するものでもあった。
(中略)
2005年9月の報告書の著者らは、1992年、1993年および1995年には、小児の甲状腺癌が見られなかったと公表し、早すぎる評価を下すという深刻な過ちを犯した。これらの評価は、数学モデル、誤った憶測、および組織的な偏見に基づいて下されたものであり、汚染された村の子供たちに見られる甲状腺癌発症率が、通常の80倍のレベルにまで上昇したというベラルーシーやウクライナの現実と合致したものでは断じてなかった。少なくとも、IAEAとその協力機関は、チェルノブイリの被災者とその家族のために実際に従事し、治療を提供する医師や保健機関による報告を棄却する際には、きわめて細心の注意を払うことを示す必要がある。「放射線恐怖症」または「ヒステリー」の症状のような健康影響に関する報告を棄却する前に、研究機関は、事故処理作業者、避難者、被災地の風下の居住者、著しい放射線曝露を受けた両親から生まれた新生児の実際の健康状況をさらに注意深く観察する必要がある

ずくなし注:「2005年9月の国連報告書」とは、2005年9月に国際原子力機関(IAEA)と世界保健機構(WHO)が『チェルノブイリ・フォーラム』報告として発表した、『チェルノブイリの遺産――健康、環境、社会経済への影響、およびベラルーシ、ロシア連邦、ウクライナ各国政府への勧告』(The Chernobyl Legacy: Health, Environment and Socio-Economic Impact and Recommendation to the Governments of Belarus, the Russian Federation and Ukraine, 2nd Rev. Ed., IAEA, Vienna, 2006, 50pp.)を指す。

ロシアの科学者アレクセイ・ヤブロコフ博士を中心とする研究グループが2009年にまとめた報告書『チェルノブイリ――大惨事が人びとと環境におよぼした影響』(Chernobyl: Consequences of the Catastrophe for People and the Environment)でも、この2005年9月の国連報告書は、事故の影響に関して十分に詳細な事実を欠いていると批判している。

非常事態省チェルノブイリ立入禁止区域管理庁長官等との懇談」の記録は比較的短く読みやすい。

なお、2011/10には、震災復興特別委のチェルノブイリ視察が行われており、チェルノブイリ事故関連ウクライナ要人からのヒアリングの模様については、震災復興特別委のチェルノブイリ事故関連ウクライナ要人からのヒアリングで取り上げた。

これを読み始めて、年賀状の返事を書く気が失せてしまった。やはり被害は想像を絶するものになる。明けましておめでとうではない。新しい年を迎えたことは、未曾有の健康被害の発現までひとつの節目を越えたことにほかならない。

『チェルノブイリの長い影〜チェルノブイリ核事故後の健康被害』から













97ページ〜98ページの一部抜粋。

2003年、国際原子力機関(IAEA)の指揮のもとで、国際的な「チェルノブイリフォーラム」が創設された。このフォーラムは、IAEA、世界保健機構(WHO)、国連の各部局の専門家や、ウクライナ、ベラルーシおよびロシア連邦政府の各代表で構成されたものである。この組織が担当していたのは、チェルノブイリ原発事故の因果関係に関する明確な科学的合意に至らせるという任務のほか、このような合意に何とか達するための活動内容をさらに向上させるという目的で、さまざまな未解決の問題に対する回答を収集するという任務であった。IAEAが、いくつかの選定された学術誌のみに収載されている学術論文を検討するようフォーラムに要求していたため、この合意に関する材料を収集する際は、各専門家はきわめて少ない情報に頼っていたということに留意することが重要である。その結果、ロンドン、ウィーン、ワシントンおよびトロントで2005年9月の5日から7日にかけて、前記「チェルノブイリフォーラム」が作成した「歴史的に重要な」報告書、「チェルノブイリが招いた重大な結果―医学的影響、生態学的影響、および社会経済学的影響」が世間に公表された。

 この報告書には、IAEAとその「専門家」が、何ひとつ実証を行わないまま、次の結論を下していた。
・小児の白血病の増大は、チェルノブイリ事故によるものではない。
・悪性腫瘍の発症数が今後著しく増大することはない。
・事故処理作業者および汚染地域の居住者にみる腫瘍学的疾患の発症率と全死亡率は、他の地域集団の類似指標を上回っていない。(チェルノブイリ事故から20年目を、多くの放射線誘発癌の潜伏期間終了としているのであれば、この結論のタイミングには注目しておく必要がある。)
・心血管疾患と放射線曝露量の増大との間に何らかの関係があることを示す証拠はない。
・人間、動物、植物の遺伝的健康にはいかなる障害も認められていない。
・事故にかかわった事故処理作業者に生じたのは免疫学的疾患のみである。
・放射線曝露が、子供の健康に何ら直接的な影響を及ぼしていない。
・1992〜2000年に、放射性降下物による影響を受けた全3カ国(ウクライナ、ベラルーシおよびロシア)において記録された甲状腺癌は、4000例であった。(実際は、この期間中、甲状腺癌の手術を受けた子供の人数は、ウクライナだけで3000例を上回っていた。)
・事故による最も重大な健康問題は、集団の心理学的健康に及ぼされる影響である。

あいにく、国際原子力機関およびチェルノブイリフォーラムが出した結論は、実態に相当するものではない。本書の概要に集められたデータは、範囲は小さくとも、「チェルノブイリフォーラム」の専門家の楽観と完全に矛盾するものとなっている。フォーラムは、国際社会を誤った楽観視に浸らせようとしているため、フォーラムの取っている立場は、チェルノブイリ災害による悪影響を受けた集団の保護に関するさまざまな予防策の価値または妥当性を否定しているかぎり、公衆衛生を脅かすおそれがある。
フォーラムはさらに、放射線による健康影響や、放射線による疾患を予防、治療し得る手段に関する調査に、素晴らしい貢献をした多くの国家の科学者による貴重な調査研究の結果を全面的に無視している。
国際社会には、核エネルギーの開発とともに、透明性および信頼性の高い放射線防護システムが生まれることを期待する権利がある。チェルノブイリの放射性降下物により悪影響を受けた多くの国家によって、そのような防護システムが根本的に損なわれているという事実が証明されている。
posted by ZUKUNASHI at 11:20| Comment(0) | 原発事故健康被害
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