大熊町双葉病院問題に思う: ずくなしの冷や水

2012年10月02日

大熊町双葉病院問題に思う

大熊町双葉病院入院患者の避難に関する報道に接して私なりに思うことがいろいろある。一つは、原発が事故を起こした場合に、強い放射能がゲリラ的に周辺を襲うその恐ろしさであり、もう一つは、そういう危険な地域に暮らすことの不安だ。

私も、いずれ、ボケが進んで徘徊したり、糞尿を垂れ流したりしてあちこちに迷惑をかけるようになってしまうと、きっと子供が安い介護施設を探して強制的に送り込むと思う。それはしょうがないことなのだが、もし、その施設が双葉病院と同様な立地条件のところであったら、完全痴呆状態になっていない限り、そんなところには入りたくないと、泣いて訴えるだろう。

大熊町にある双葉病院は、福島第一原発から約4.5kmの至近距離にある。なぜこのような場所に医療法人が内科、精神科、神経科を診療科として標榜する病院を設置したのだろう。届出又は許可病床数は、精神病床350床とされている。近くに傍系の介護老人保健施設「ドーヴィル双葉」がある。

なお、この記事で、双葉病院とその避難の経緯については、主としてウィキペディアの記述を参考にした。

双葉病院(双葉町にあるのは双葉厚生病院)の周辺環境は、下の地図のとおりだ。東に福島第一原発、南に福島第二原発があり、どちらで事故があっても大きく影響を受けることは避けられない。

今回は、より近い第一原発で事故。事故直後の空間線量率のピークは、大野では0.39ミリシーベルト(10分平均、時間平均などデータのどれを採るかにより異なる)だが、約10km北の双葉町上羽鳥では、3/12の午後に1.59ミリシーベルトを記録している。その北にある新山では同日0.904ミリシーベルト、そして南にある福島第二原発では3/15の未明に0.155ミリシーベルトを記録している。

福島第一原発の近傍地では、事故の進行と風向きに応じて四方八方に極めて強い放射能の気流が押し寄せている。この地域では、もちろん初めての経験になるが、過酷事故があればこうなることは良心的な学者や市民研究者が何十年来警告し続けてきた。

双葉病院の院長は、福島第一原発事故に伴う避難に際して、病院側に過失はないとの立場だが、このような場所に自力での避難が困難な多数の患者を収容し、併設の介護施設も運営しながら、万一の場合の避難の方策をどう考えていたのだろう。自衛隊が、警察がやってくれると考えていたならば、甘すぎる。自衛隊の隊長が雲隠れしたとの話もあるが、接近したら死ぬほどに放射能が強くなったら、誰も助けには行けない。


もともと介護施設に収容されているような年寄りは、ほとんど自力での外出は困難だろう。車椅子が必要な場合、一人に付き一人介護者がいる。寝たきりのお年寄りならば、ストレッチャーで運ばなければならないから、路面の悪い場所には行けない。

東日本大震災で、津波の襲来した地域の沿岸部に老人介護施設はなかったのだろうか、そして避難は円滑に行われたのだろうか。特に津波の場合は、時間がない。

双葉病院とドーヴィル双葉の入院、入所者の避難は、3/12、3/14、3/15の3回にわたって行われた。下の図に避難経過の要点を記したが、双葉病院近辺の空間線量率は、3/14深夜までは、周辺の他の地域よりも特に高くなっていない。

双葉病院に近い大熊町大野のMPの測定値(黄色のライン)によると、3/13の昼前後に6マイクロシーベルトまで上昇しているが、その後は小康状態となり、本格的な上昇は3/14の深夜に生じている。このときは0.1ミリシーベルトを超えたものの短時間でまた低下し、次のピークは3/15の昼頃になっている。


福島第二原発のMP4の測定値を桃色で示してあるが、こちらは3/14の深夜から3/15の午前にかけて測定値が高止まりしている。3/15に関東を襲ったプールームが通ったためだ。

空間線量率の推移を見れば、双葉病院に関する限り、3/12から間を空けずに避難活動を続けていれば、被曝量は即致命的な水準に達するわけではなかったのではないかと見られるし、今回の避難の経過を見てもぎりぎりで空間線量率のピークの時間帯を屋外で過ごすという最悪の事態は最小限に抑えられたのではないかと思う。

しかし、双葉病院の患者避難問題をめぐる福島県の対応には、正視に耐えない低劣さが見える。県は「患者だけが残された」と事実に反する報道発表を行っている。入院患者の避難の遅れと、死者多数発生の情報で役人の頭の中には、放射能による被曝が死亡原因だとされると原発を推進し、事故に備えた対策を怠ってきた自分たちの責任が問われると、すぐに閃いたのだろう。

病院側の対応が悪く避難が遅れて死亡者が多数発生したことにすれば、責任が転嫁できるし、放射能漏れで直接死んだ人はいないとの立場をとることができるからだ。

しかも、事実関係の確認もおろそかなまま、このような情報のみ開示に前向きなのは、悪質極まりない。

おそらくは、自然災害や公害に脆弱な地域に保育園や小中学校、病院や老人介護施設などを建てているところは、地域の人たちの命に対する思いが軽いのではないかと思う。そういうところでは、老いぼれた老人などは、金儲けの道具に使えないとなれば、道端に投げ捨てられるのではないかと、いう個人的な恐れを強くする。できれば、そのような施設に入らずに、自然に死にたいものだが、どうしたらいいだろう。

息子が鬼のような嫁を連れてきて、私を家から追い出すようなこともあるかもしれない。現代姨捨山バトル、あちこちで始まっているのかもしれない。
posted by ZUKUNASHI at 15:24| Comment(0) | 原発事故健康被害
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