3 東日本の小選挙区別出生数の変化状況
東日本の小選挙区別の2011年と2012年の前年同期比出生数変化率を計算し、グラフに示すと次のようになります。ここで宮城県は、地震津波の影響で出生数の把握に時間を要し、月別の出生数の仕分けがずれていると見られることから除外し、福島1区と福島5区も事故後の人口流出・移動が大きくなっていることから除外しました。
次のグラフで青い点が2011年4〜8月の出生数の前年同期比、赤い点が2012年4〜8月の出生数の前年同期比ですが、1.0を下回っている赤い点が多いことに気づきます。
2011年4〜8月の出生に関しては、3月中旬の段階では多くの方が既に安定期に入っていたでしょうから原発事故の影響によって異常出産などが増えたとは考えられません。ヒトの中で最も放射能の影響を受けやすいのは胎児だといいますから、2011年の後半から妊娠出産に影響が出てきたはずだと考えます。そもそも、子作りの活動があっても、妊娠、着床しない例も増えたはずだと思います。
2012年4〜8月の出生数の前年同期比は、大きくばらついています。赤い点で表示される2012年4〜8月の死亡数の前年同期比下位37を取り出すと以下のとおりです。
1 福島2 郡山市 _ 0.84
2 千葉9 佐倉市 _ 0.89
3 茨城7 古河市 _ 0.90
4 千葉6 松戸市 _ 0.90
5 栃木4 小山市 _ 0.90
6 千葉8 柏市 _ 0.90
7 茨城5 日立市 _ 0.90
8 埼玉12 熊谷市 _ 0.90
9 福島3 須賀川市 _ 0.90
10 千葉11 茂原市 _ 0.91
11 埼玉4 新座市 _ 0.91
12 群馬3 太田市 _ 0.91
13 山梨1 甲府市 _ 0.91
14 静岡1 葵区 _ 0.91
15 福島4 会津若松市 _ 0.92
16 埼玉10 坂戸市 _ 0.92
17 群馬2 伊勢崎市 _ 0.93
18 神奈川11 横須賀市 _ 0.93
19 長野2 松本市 _ 0.93
20 群馬5 渋川市 _ 0.93
21 新潟2 柏崎市 _ 0.93
22 千葉12 木更津市 _ 0.93
23 山形3 鶴岡市 _ 0.93
24 群馬1 前橋市 _ 0.93
25 新潟5 長岡市 _ 0.93
26 千葉7 流山市 _ 0.94
27 静岡4 清水区 _ 0.94
28 埼玉5 北区 _ 0.94
29 千葉1 中央区 _ 0.94
30 神奈川13 大和市 _ 0.94
31 新潟1 中央区 _ 0.94
32 秋田1 秋田市 _ 0.95
33 神奈川16 厚木市 _ 0.95
34 千葉5 市川市 _ 0.95
35 埼玉13 春日部市 _ 0.95
36 東京25 青梅市 _ 0.95
37 茨城1 水戸市 _ 0.95
ここに上がった小選挙区は、死亡数の変化で見たものと大きく異なり、都県別にも、福島が3で全員当選は別格として、千葉が8、埼玉が5、群馬が4、茨城、神奈川、新潟が3、静岡が2、山形、秋田、東京、山梨、長野、栃木が各1と広く散らばっています。
これは一つには、東京近郊の世帯主夫婦の年齢が低い地域で子作りに急ブレーキがかかったことを示すものですし、地方では少子化傾向、結婚難が続いていることの現われだと言えるでしょう。
しかし、東京近郊の人口増加地帯で子作りに急ブレーキがかかった理由は何でしょう。原発事故を契機にバスコントロール意識が徹底したのでしょうか? 亭主が求めても、妻が「今は避難を考えなきゃならないのにそれどころではないでしょう!」と手を払いのけるようになった??
私は、どちらでもないと思います。なぜかできない、あるいは夫婦に体調不良が生じて子作りの営み自体が少なくなっているということではないでしょうか。
そして地域を見ると、米国国防総省の推計で内部被曝が多かった小山市などと並んで、千葉県の濃厚汚染地帯が多数ランクインしていますから、初期の被曝とその後の継続的な被曝の双方が影響していると見られます。
流山市の千葉7区は、2011年の出生数の増加率1.114が2012年には0.935に、千葉9区は、1.078から0.89に低下です。小山市の栃木4区は、1.051から0.903に落ちました。
ヒトの最もデリケートな営みに、放射能は確実に悪影響を与えています。生まれ出てくればもう大丈夫ということではありません。放射性物質の体内蓄積が進めば、それこそありとあらゆる疾病が姿を現し、寿命を縮め、体力の落ちた人から亡くなっていくのです。
小さな子供ほど、余命は長いはずなのに、放射能の悪影響はより強く受けます。「福島県に住み続ければ、親より子供が先に死ぬ!」と書きましたが、これは福島県に限ったことではありません。
4 最新の人口自然増変化指数
福島第一原発事故から1年半以上が経過し、健康被害は蓄積し、悪化しています。セシウム134が多少減衰しても、セシウム137に加えてストロンチウムなども沈着しており放射線環境は良くなっていません。
上で見た死亡数、出生数の変化率を用いて2011年4〜8月に比した2012年4〜8月の人口自然増変化指数は、次のようになっています。その1の冒頭に書いたように、この値が1以上なら、死にやすく産まれにくくなっているわけで、状況はまったく改善していないことを示しています。
ただ、福島第一原発事故後の変化を捉えていますので、事故をはさんで計算した以前の指数の分布よりは、全体的に水準も下がり、分布曲線もなだらかになっていますが、そのことが安心材料になるとはいえないでしょう。今は、潜伏期間なのですから。
2012年09月29日
2012/8分までの人口動態統計に基づく人口自然増変化指数 その2
posted by ZUKUNASHI at 12:57| Comment(0)
| 原発事故健康被害
この記事へのコメント
コメントを書く