前の記事で、事故直後は、ヨウ素による内部被爆が圧倒的に大きいことを知った。ならば、日本原子力研究開発機構が平成23年6月15日に公表した「東京電力福島第一原子力発電所事故発生後2ヶ月間の日本全国の被ばく線量を暫定的に試算」の結果で全体的な状況を把握できる。
次の図は、アニメーションから節目となる日時をとらえて切り出した画像だ。まず、2011/3/16、日本時間18時。3/15から関東に波状的に襲来したプルームがしばし関東から離れた時に当たる。
東京湾の周辺約40km圏と房総半島、栃木、群馬県にまたがる山間部を除いて0.01から0.1mSv、千葉県の東端部と茨城県の北半分に0.1〜1.0mSvの地域がある。
群馬県から新潟県、長野県への染み出しが見られるが、空間線量率の上昇などと比較すると、内部被爆線量については染み出しの度合いが少なく示されているようだ。
3/21から始まったプルームの波状的襲来と降雨による沈着を経た3/28、24時現在。東京湾周辺部も全面的に0.1mSv以下に染まっている。茨城県と千葉県東端部で被爆線量が増えている。群馬県と栃木県の山間部全域が同じく0.1mSv以下となった。
5/12、午前3時現在。3/28、24時現在とほとんど変わらない。茨城県の緑が広がっているように見える。
上の地図から、関東一円が事故発生から2ヶ月間でI-131の吸入による実効線量が0.01mSvに達し、ところによっては0.1mSvに達したことが分かる。
この試算では。ヨウ素131だけを対象にしているが、前の記事で触れたように、東京都立産業技術研究センターの計算した3/15、10時から11時までの吸入摂取による実効線量では、ヨウ素131は全体の25.4%にとどまりセシウム137の寄与34.9%の方が大きくなっている。
したがって、ヨウ素131だけで0.1mSv程度だとしても、他の核種を含めれば、0.4mSv程度になる。
また、小出裕章氏の分析では、ヨウ素131の寄与は61.9%になるが、同氏が当日に使った試料の収集方法ではガス状の放射能は捕捉できないとされ、ヨウ素の場合は捕捉できない分が(を含め?)「6〜7 倍」あるとのことだから、上の線量区分で0.1mSvを超えた地域は実質上0.5mSvを越す実効線量となっている恐れがある。
なお、私は日本原子力研究開発機構による上の試算は、相当抑制的に見積もっていると考えるが、原資料に記載されているように、「あくまでも計算シミュレーションであり、放出量情報も暫定的な数値に準拠しているため、実際の線量を保証するものでは」ないことに注意する必要がある。
いずれにしても、関東全域の住民が事故直後に相当量の内部被爆を受けており、それが時間の経過とともに、各種の身体症状として表れることは避けられないと考える。
次は、内部被爆と外部被爆を合わせて考えてみよう。資料としては、日本原子力研究開発機構による「事故発生から2ヶ月間の外部被ばく実効線量の試算結果」がある。
