福島第一原発周辺への帰還はこの上なく危険の続き
武田邦彦氏のブログに、福島第一原発4号機燃料プールは「2011年3月の爆発より大きな危険を生じるか」という観点の記事が掲載されている。
詳しくは記事をごらんいただくとして、結論は次のようになっている。
@ 4号機が核爆発する可能性はほとんど無い、
A 水が漏れて空だきになったら核爆発の危険性は下がる(水がないと安全になる)、
B 地震で4号機が倒壊すると1万分の1ぐらいの確率で原発の風下30キロぐらいは危険地帯になる。
この記事を受けて掲示板で議論が起きている。それぞれに有用な指摘で参考になる。
だが、福島第一原発4号機燃料プールについて、今最も懸念されているのは、爆発的事象の有無ではなくて(爆発的事象が見込まれるなら、関東全域は即刻避難だ)、じわじわと、そして累増的に放射性物質が放出される事態、それによって形成されたプルームが再びあちこちに流れて住民を被爆させる事態だ。
まず間違いのなさそうなことは、4号機燃料プールの水が抜けると燃料棒から出るγ線で周辺に人が立ち入れなくなることだ。
現在、4号機燃料プールについては、燃料棒の取り出しのための準備作業が進められている。燃料棒取り出しのためには、4号機を跨ぐクレーンを設置し、燃料プールの中にドライキャスクと呼ばれる容器を沈め、水中で燃料棒をこの容器に詰める必要がある。
日本原子力発電のサイトによれば、同社の使用するドライキャスクは、全長5.7m、外周直径2.7m、重量は記載されていないがWeblio辞書によると100トンを超えるものも使われている。
ドライキャスクは、空冷式の保管・輸送用容器だが、これを水中に埋めて装填作業をしなければならないのは、使用済み燃料棒をそのまま空中に引き上げた場合、水によるγ線遮蔽効果がなくなり、作業をしている人間が死ぬほどのγ線を浴びるからだという。
すなわち、燃料プールの中の水がなくなれば、強烈な、近傍では致死的なγ線が発せられるわけで、燃料棒の抜き取り作業など望むべくもないし、4号機だけでなく、他の号機の作業も放棄を余儀なくされる恐れがある。
そうなると、1号機の石棺化作業も無理となり、福島第一原発はまったく手がつけられないまま放置される恐れがある。その後に何が起きるのかは誰もわからない。今でも、1〜3号機の実態は分かっていない。メルトダウンした原発の処理の経験は、世界的に数えるほどしかないし、福島第一原発ほどに深刻な事故は未曾有の経験だ。
武田氏は、燃料プールの中の水がなくなっても空気で冷やされるから、燃料棒の溶融はないとの見方のようだし、他の専門家の中にも燃料棒が壊れずに保たれているなどの条件はつくものの、せいぜい140度から300度くらいではないかとの見解を示す人もいる。
4号機燃料プールの燃料棒がすべて健全な形を保っているかも分からない。東電の発表したビデオを見ると、瓦礫が落下している。地震や爆発時の振動がどんな影響を与えたのかも未解明だ。
原子力関係の研究機関は多数あるのに、4号機燃料プールの水が抜けた場合でも大きな危険がないとの分析結果が出ているとは聞いていない。東電が4号機については危険はないと言っているから、そんな研究結果が出てきようがないといえばそのとおりだが、もし、危険が限定的ならその検討結果を発表すべきだ。
住民に最低限の情報提供もしないまま、政府、自治体が住民帰還の旗を振るのは異常に過ぎる。政府、自治体は信用できないとの認識は広がっているが、被災地の住民は自力でリスクを回避できない人も多いのに、保護の手が差し伸べられないという日本の現状は、絶望的だ。
なお、このブログの記事を使って、4号機燃料プールの発熱量から冷却が止まった場合の水温の上昇を計算した方がおられ、その結果が掲示板に掲載されている。
「現在の4号機燃料プール崩壊熱は0.7MW程度です。
熱の仕事当量を4.1855[J/cal]とすると
0.7[MW] ÷ 4.1855[J/cal] ÷ 100000[cal/kg]
= 1.672440568[kg/s]
※ 100000[cal/kg]は、0℃の水1kgを100℃にする為に必要な熱量
となるので、大雑把に言えば、現在の4号機燃料プール崩壊熱は、0℃の水、約1.7リットルを1秒で100℃にする程度です。」
この方の計算値を用いて燃料プールの実際の温度上昇と比較すると実際の温度上昇は計算値の6割程度となる。崩壊熱の推定やプールの容積量などの前提自体にアバウトな面があることを考慮すれば、そんなにおかしくない数値だと思う。
2012年07月04日
福島第一原発4号機燃料プールの危機でこれだけは確実
posted by ZUKUNASHI at 14:59| Comment(0)
| 原発事故健康被害
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