4号機の謎再考: ずくなしの冷や水

2012年03月23日

4号機の謎再考

4号機の爆発の謎については、いろいろ調べてみたが、判明している事象全体を整合性の取れた形で理解することができず、2012/2/7に「4号機の謎は解けない」を書いて打ち切りにした。

だが、その後新しい材料が得られたので再考してみた。

1 主な経緯
3/11 14:46:18.1 地震発生
   地震後津波到来前に4号機北側から白煙が上がる。(FUKUSHIMA DIARY  2012/3/18の記事
   15:42 1〜4号機の非常用電源が津波で喪失
3/14 11:01 3号機で爆発
3/15 4:08 4号機の核燃料貯蔵プールの温度が84度に上昇
   6:00 4号機プール付近で爆発
   9:38 4号機で出火を確認
3/16 5:45 4号機で再び火災確認
3/21 6:37 自衛隊の放水車など13台が4号機プールに放水開始
3/22 10:35 3、4号機に外部電源接続
3/23 10:00 4号機プールに生コン圧送機で注水開始

2 3/11の地震発生時の作業員の証言
4号機の原子炉建屋で作業をしていた人は、「作業をしていたら突然ゴーっという音がして激しい振動を経験した」、「地震と同時に照明がなくなり、真っ暗の中で恐怖を感じた」、「プールの水が波打ってみんなかぶっていると思う。死ぬかと思って覚悟を決めた」とNHKの取材に述べている(3/20)。
また、4号機タービン建屋地下1階で作業をしていた人は、「非常灯もつかず、懐中電灯を頼りに1階の建屋入り口に向かった。入り口には数百人の作業員が押し寄せており、必死の思いで脱出」と述べている(3/24時事)。

これらの情報からすると、4号機で3/11に人払いをして特殊の作業を行っていたということではなさそうだ、

3 定期点検
4号機の定期検査のための停止予定期間は、平成22年11月30日〜平成23年9月24日(299日間)と東電のリリースにある。この点検ではシュラウドの交換が予定されていた。2011/7/6の社会新報は、「原子炉圧力容器のシュラウドは切断され、五階のDSピット内に移動されていたとの東電関係者の話を伝えている。他の作業員にも、圧力容器内の機材がDSピットに入れられていると述べている人がいる。

シュラウドが半分水中でアーク切断され、取り出されていたなら、燃料棒の装着は無理だ。人払いをして特殊な作業を行っていたとは考えられない。


4 原子炉の水の発熱
生コン圧送機で4号機プールに注水を開始した3/23、と翌3/24、防衛省が撮影したサーモグラフィの画像では、燃料プールより原子炉の放射温度の方が高くなっている。この画像は、いくつかのサイトで見ることができる。

この後も初夏にかけて、4号機からの大量の湯気が観察され、原子炉のある辺りから立ち上っているとの指摘が続いた。

東電が発表した原子炉ウエルの画像では、周囲に塩か石灰か湯垢の付着が激しい。原子炉内に何らかの発熱物があったことは、否定できないだろう。 


5 燃料プールの燃料棒の損傷はたいしたことはないようだ。
東電が発表したビデオ画像によれば、燃料プールの燃料棒に大きな損傷は見られない。東電が他の燃料プールの画像を使っていたり、損傷のない部分だけを示しているのなら、話は別だが。米国NRCも、当初燃料プールが原因としていたが、その後見解を修正した。

6 4号機の爆発は、3号機からダクトや地下通路経由で水素が流れ込んだためとする説もあるが、ダクトは4号機爆発前に外れている。軽い水素が地下通路経由で流れ込むとも思えない。

7 爆発直後に放射能値が上昇。
3/15の4号機爆発直後、周辺での放射能値が急上昇している。使用済み燃料プール内の燃料が損傷していない、原子炉から放射性物質が漏れたのでもないとすれば、他に放射能値を上げるような事象、反応があったことになる。

8 「福島第1原子力発電所の不測事態シナリオの素描」で被ばく線量評価(P11)が、4号機燃料プールについて1炉心分と2炉心分と分けて計算がされている。

4号機の燃料棒は、使用済み燃料プールに1,535本保管されていたという。このうちの204本が新燃料とされ、燃料集合体装着本数が548本だというから、使用済みの燃料で定期点検前からプールに保管されていた本数は783本となる。

9 ドイツZDF 「フクシマのうそ」の中で、ナカ氏は、「燃料プールの上の階には、新しい燃料棒が保管されている」と述べている。新燃料は、使用済み燃料プールの中には入っていないことになる。

私設原子力情報室」によると

「新核燃料は95.9%がウラン238で、残りの4.1%が連鎖的核分裂反応を起こすウラン235です。新しい燃料なので、もの凄い放射線を発していそうな気がしますが、実はそうではありません。ウラン238の半減期は44億6千万年。ウラン235は7億年。少しずつアルファ崩壊はしていますが、その線量は限られたものです(近くに長時間いるのは危険です)。

また、崩壊熱もありません。ですから、新燃料の輸送に使う容器には、水も放射線の遮蔽材も使われていません。」

との説明があるから新燃料が輸送用容器に入ったまま、あるいは容器から取り出されてプールの外に置かれていてもおかしくない。東電は、新燃料は燃料プールに入っているとしているが、当初収容燃料棒の数字は、定まらなかった。東電は、なぜ、数字を二転、三転させたのか。

10 地震で4号機は激しく揺れた。
燃料プールの健全性が確認できると言っても、冒頭の作業員の言では、「プールの水が波打ってみんなかぶっている」とのこと。それだけ揺れたら、新燃料も激しく揺すられたはずだ。

「私設原子力情報室」は、新核燃料の怖さについて、「臨界の起きやすさです。ウラン235の濃度が高いので、使用済み核燃料に比べて、少ない量で臨界に達します。
逆に言えば、臨界を起こさないために、核燃料は細い燃料棒に小分けされているとも言えるのですが、燃料棒の被覆管が壊れて核燃料そのものが一か所に集まったら、あるいは、燃料棒同士の距離が近づきすぎたら、それだけで臨界は起きるのです。」と述べている。

激しい揺れで、新燃料の燃料棒同士の距離が近づきすぎ、何らかの反応が起きた可能性はないのだろうか。

12 FUKUSHIMA DIARY  2012/3/18の記事)は、福島第一原発のライブ画像を精査して、地震後津波到来前に4号機北側から白煙が上がっていることを指摘している。

さらに、3/14 11:01の3号機の爆発は、即発臨界だったとの指摘もあり、そうであれば、中性子線が隣接の4号機建屋内に大量に飛び込んだだろう。これも、新燃料が臨界を起こす要因となりうる。

地震後、早い時点で、新燃料が臨界に達し、溶け始めたのではないか。

13 建屋の損傷が1、3号機とまるで異なる。
小出氏は、2012/1/9の毎日放送「たね蒔きジャーナル」で次のように語っている。
「1号機も3号機もオペレーションフロアーと私たちが呼ぶ、最上階の部分で爆発が起きてまあ体育館のようなどん長の部分が吹き飛んでいるのですが、4号機だけはそうではないのです。そのどん長の部分も吹き飛んでいるし、さらにその下の1階分、さらにまたもっと下のもう1階分ぐらいのところの建屋が爆発で吹き飛んでいるのです。だから使用済燃料プールが埋めこまれている場所というところが、すでに爆発で破壊されてしまっているわけで、いつ、使用済燃料プールが崩壊してしまうかがわからないという状態が4号機の爆発以降ずうっと続いているのです。(補強工事はやったが)次に大きな余震が来たときに4号機の使用済み燃料プールが、本当に壊れないんだろうかということが私は不安なのです。もし壊れてしまえば、政府が3月15日のころに予想したように、250キロというようなところも、膨大な汚染を受けるようなことになると思います」


14 4号機の5階(呼び方によっては4階)の平面図を見ると、南西の角に大物資材搬入搬出用と見られる吹き抜けがあるし、他にも2箇所ほど吹き抜けがある。階段も3箇所ある。新燃料がどこに置かれていたのかは不明だが、もし、吹き抜けや階段の近くに置かれていたのだとすれば、溶解した新燃料が下の階にしたたり落ちるということありうるし、原子炉ウエルに流れ込むことも考えられる。

そして、流動性を増した溶融燃料は、流動しつつ時に再臨界を起こしたのであろう。爆発後2回にわたって火災が発生と報告されている。原子炉ウエルに入り込んだ燃料は、水が臨界反応を促進する役割を果たし、核反応が続いたために原子炉ウエルから水蒸気が噴出し続けたのだろう。

15 4号機北側の壁の穴から、何か粘り気の強い黒っぽい液体が溶け出て流れ落ちている。「4号機爆発は、想定外の核爆発だった!」の画像がよく分かる。このサイトは、「米国政府が情報解析用に□や○を記入した画像。彼らは、4号炉建屋爆発は、炉でもプールでもない場所に放置されていた核燃料が真犯人だと視ている!」との記述がある。

東電は、プレスの構内視察の際に4号機の北側についての写真撮影を禁じたと読んだ記憶がある。

16 東電は、この爆発の原因を工事用のガスが爆発したなどと言っていたが、現場の調査は大幅に遅れ、6月になってから、米国から借りた垂直離着陸方式の小型無人機で4号機の内部を調べた。
次の画像は2011/6/14、午後8時少し前のJNNのライブ映像。

4号機建屋の放射能は、他の号機よりは低いようで、オペレーションフロアーの片付けは進んでいるが、北側についての情報はない。北側の排気塔の近くは高線量が検出されている。

溶融燃料が建屋内にあれば、局部的とはいえ猛烈な放射能が観測されるはずだが、臨界が止まれば臨界継続時間が短いから、それほど放射性物質は増えていないのかもしれない。

17 4号機の状況は、既に東電が良く把握しているはずだ。その上で、使用済み燃料の取り出しに向けて多くの方が危険を犯しながら日々作業を続けている。

上のように理解した場合に、この先の参考となるのは、使用済み燃料プールには、1,535本ではなく、1,331本が入っているということだけだが、燃料プールの水漏れや建物の倒壊を想定した場合、気休めになる材料ではない。
posted by ZUKUNASHI at 21:02| Comment(0) | 福島原発事故
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