いわき市がヨウ素剤を対象全住民に郵送配布: ずくなしの冷や水

2012年02月22日

いわき市がヨウ素剤を対象全住民に郵送配布

いわき市は、2011年の暮れから、全6万8000世帯を対象に、40歳未満の住民約14万人に安定ヨウ素剤の郵送配布を始め、2012/1月中には配布完了の予定。

これは、政府の被曝対策見直しに先行した動きだ。

「原発事故発生時の被ばく対策見直しを検討している内閣府原子力安全委員会の分科会は2012/1/12、甲状腺被ばくを防ぐ安定ヨウ素剤を、原発から半径30キロ圏内の各家庭に事前配布することが有効とする提言案を示した。

提言案は、予防防護措置区域(原発5キロ圏、PAZ)及び緊急防護措置区域(同30キロ圏、UPZ)=安全委で導入を検討中=への各戸事前配布について「有効」または「有効だろう」とした。放射性ヨウ素防護地域(同50キロ圏、PPA)=同=については「各戸事前配布や屋内退避期間中配布を検討するべきだ」とした。さらに、服用指示の実施手続きや判断基準、国の責任を明確化することを求めた。」

いわき市は、60km圏に市域のほぼすべてが含まれる。内側の円は30km圏を示す。


いわき市は、2011/3/18に市民が公民館などに取りに行く方式でヨウ素剤を配布しており、その際の市の発表文は次のように述べている。

「本市の場合、現在、国による退避指示の範囲にはなく、健康被害が心配されるものではありませんが、避難所において、他の市町村から避難されている方に出身自治体において、安定ヨウ素剤がすでに配布され、市民に不安が広がってきていること、また、なぜ配らないのかという市民の不安に思う気持ちに応え、万が一、高い濃度の放射能物質にさらされた場合に備え、「安定ヨウ素剤」を本日からお配りすることといたしました。」

そして、平成23年11月30日には、次のように発表している。

「現時点においては、未だ原発事故が収束していない状況にあり、また、配付した安定ヨウ素剤が本年12月に有効期限を迎え、対象となる全ての方に新たに配付する必要があることから、郵送(簡易書留)により事前配付及び回収を行うこととしました。」

欧米では、安定ヨウ素剤を誰でも薬局で購入でき、機動的に服用できる仕組みになっているというから、その方向に近づくのは良いと思う。ただ、いわき市で服用のタイミングの指示は、誰が責任をもって行うのだろう。

国の原子力安全委員会は、ヨウ素剤の服用を指示するかどうかの判断にSPEEDIを使わず、実測データを用いる方針を示しているが、いわき市内にモニタリングポストがあるのかどうかも不明だし、誰がどのデータに基づいて服用の判断をするのだろう。

しかも、放射性ヨウ素に的を絞ってどうやって測定するのか。

いわき市については、放射性ヨウ素による被曝が強いところもあったと見られている。8/11朝のNHKのニュースで、3月の小児甲状腺サーベイで福島県のいわき市の4歳児が35mSVの被曝と判定されたが、その情報が安全委員会のホームページから削除されたとの情報が流れたのだそうだ。

3月の小児甲状腺サーベイとは、次のものを指すのだろう。

2011/5/12原子力安全委員会事務局発表
3/23のSPEEDIの試算を踏まえ、特に感受性の高い小児への健康影響をより正確に把握するため、屋内避難区域あるいはSPEEDIを用いた試算(3/23公表分)で甲状腺のの等価線量が高い評価された地域の小児の甲状腺線量の実測を原子力災害対策本部事務局宛に依頼した。
3/26〜3/27 いわき市保健所 134名
3/28〜3/30 川俣町公民館 647名
3/30 飯舘村公民館 299名
合計 1,080名

いわき市は、空間線量率は福島県内では相対的には高くないが、放射性ヨウ素に関しては、飯舘村と同レベルと見られている。上の資料では結果も記されている。

小児甲状腺サーベイの結果
小児甲状腺被曝調査を実施した0歳から15歳までの1,080人の小児については、スクリーニングレベル0.2μSv/h(一歳児の甲状腺等価線量として100mSvに相当)を越えるものはなかった。

なお、調査に関する内閣府原子力被災者生活支援チームの資料には、「1歳児以下で0.2μSv/hを越える場合、放医研問い合わせとする」とある。

2011/8/17原子力被災者生活支援チーム医療班発表資料
小児甲状腺簡易測定結果の概要について
このスクリーニングに関する原子力安全委員会の評価

最も高いスクリーニングの値を示した小児は、0.1μSv/h。0.2μSv/hが一歳児の甲状腺等価線量として100mSvに相当するわけだから、一歳の小児で0.1μSv/hなら甲状腺等価線量として50mSv相当。小児の年齢が高ければ甲状腺等価線量は下がるから、この最高値を示した小児が上のNHKの報道で言ういわき市内の小児の可能性が高い。

いわき市内の他の小児も高い被曝をしている恐れがある。

2012/1/18、内閣府原子力安全委員会の作業部会の主査を務める本間俊充・日本原子力研究開発機構安全研究センター長は、「緊急時にSPEEDIは信頼性に欠ける。予測システムで何かができるというのは幻想だった」と述べたと伝えられている。巨額の経費をかけて構築してきたSPEEDIは幻想の賜物なのか。

今後の被曝対策を実測値によることとしたら、それこそいざというときに役に立たない。電力会社が3/11以降改心してこれからは事故の際には事実をありのままに公表するとでも考えているのか。SPEEDIのデータ隠しの弁明のための信頼性議論は論外だ。小児甲状腺サーベイの対象地域の選定でもSPEEDIのデータを使うしかなかったではないか。

いわき市も、2011年3月の失敗の挽回を図り、放射能防護先進都市を目指しているのなら、それなりに評価すべきだと思うが、やっていることは場当たり的だ。

・・・・・

2012/2/21の朝日新聞から
2012/2/21、内閣府の原子力安全委員会は、昨年3月下旬に福島県いわき市で実施した検査で、甲状腺の局所の被曝線量が最高で35ミリシーベルトだったという評価値を公表した。

安全委は、昨年3月末に線量の高い子の追加調査をするよう国の原子力災害対策本部に助言したが、子どもや家族の不安につながるおそれなどを理由に受け入れられなかったとしている。

対策本部生活支援チームは「安全委は昨年4月3日に『直ちに追跡調査をする必要はない』という助言を出している。今ごろ追加調査を助言していたと主張するのはおかしい」という。
・・・原子力安全委員会がHPから削除した甲状腺の被曝線量が35ミリシーベルトの幼児がいたことを改めて認めたことになる。追加調査の助言を巡って関係者の主張が齟齬をきたしており、どこに真実があるのか。責任逃れの一環か。

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(初出 2012/1/24 追記 2/22)
posted by ZUKUNASHI at 10:13| Comment(0) | 内部被曝防止
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