カリウムでセシウムを抑えられるか: ずくなしの冷や水

2011年12月31日

カリウムでセシウムを抑えられるか

今年も残すところ1日となったが、歳末の感がしない。もっと深刻なことで頭が一杯だ。ドイツの女医でベラルーシーの子供の面倒を見てきたデルテ・ジーデントプフ医学博士が日本人に向けて発したメッセージが重い。

これから日本の方々を襲おうとしている健康問題は想像を絶します。

し尿に含まれるセシウムは低下傾向」に書いたように、いくつかの都市のし尿に含まれる放射性セシウムは、ピークを越えたと見られるが、低減は緩やかだ。

上の記事で取り上げた上田市、相模原市、川口市、佐倉市のうち、ピーク時にセシウム濃度が特に高かった上田市は、特別の原因があるようだからこれを除いて考えよう。

川口市と佐倉市は、ピーク時の脱水汚泥中のセシウム濃度が60Bq/kgとなっていて、直近時点では、これが50Bq/kgまで低下している。しかし、ここ数ヶ月の数値の変化を見る限り、この値が短期間のうちに限りなくゼロに近づいていくとは、期待しがたい。

もし、し尿中のセシウム濃度が安定してきているとすれば、食物に含まれて消化器に入るセシウム量と体内に吸収されないで排出されるセシウム量および体内から尿により排泄されるセシウム量が平衡状態になっている可能性がある。

2011/12/29の読売新聞の報道によると、三郷市の市民団体が12/28、市内の3〜10歳の子ども5人の尿から1リットル中、1.04〜0.19ベクレルの放射性セシウムが検出されたと発表している。

川口市では、2011/7/29、10歳女の子の尿からセシウム137が0.41ベクレル検出されている。

セシウムは、カリウムに近い物質特性を有するため、生物体はセシウムをカリウムと取り違えて吸収することがあるという。

次の表は、大央電設工業株式会社のサイトに掲載されていた「尿と大便の栄養素比較」。このデータの原典は、リンク先のページに記載されている。

このデータによれば、人は、1日にし尿を1,400g排出し、尿にカリウムが2.5g、便に1.0g含まれていることになる。

日本人の1日の水を含めた食物摂取量は約2kg。日本の地方自治体のし尿処理のデータでは、一人1日当たりのし尿排出量は2〜3kgというデータがあるが、これはトイレで水が加えられたりしているためと考えられ、1.4kgという数値は、妥当なところだと思う。

このカリウム排出量は、平衡状態のもとでの数値だと見られるから、1日3.5gのカリウムを口から取り入れ、2.5gは吸収され、1gが体内に吸収されずに排泄され、尿に含まれるカリウムと合わせて排泄分は合計3.5gになると見ることができる。

厚生労働省「日本人の食事摂取基準」2005年版によると、1日のカリウムの摂取目安量は、18以上の男で2000mg=2g、女で1600mg=1.6gとされており、上の平衡状態のもとでのカリウムの収支は、問題はない。

私の関心事項は、もし、生物体が、セシウムとカリウムをまったく同じものとして扱うなら、人間が長期にわたって放射性セシウムを1日3.5ベクレル口に入れたら、いずれセシウムの平衡状態のもとで1ベクレルがそのまま排泄され、2.5ベクレルが体内に取り込まれることになるのかどうかという点だ。

もし、そのような現象が起きるとしたら、尿中に0.25ベクレル検出される人は、0.35ベクレルを口にしていることとなる。

生体必須元素であるカリウムは、成人で約140g程度の一定量が常に体内に保持され排泄調整されているとされる。尿中の排泄量2.5gの56倍だから、この割合をセシウムに当てはめれば、0.25×56=14ベクレルが体内にあるという計算になる。

木下黄太のブログの2011-07-30の記事では、上の川口市の10歳のお子さんの例に関連して、次のように書かれている。

「体内にはいったセシウムは、尿の量や、生物学的半減期、排出の状況から判断して、尿の検出量の最低百倍程度は、一端、取り込んでいる可能性がある。勿論もう少し多い想定もありうる」と。この場合は40Bq以上は取り込んでいるということ」

放射性セシウムの生物学的半減期は、論者により異なるが、次のような見解が有力なようだ。、
セシウム137:生物学的半減期:約70日(物理学的半減期:約30.1年)
セシウム134:生物学的半減期:約100〜200日(物理学的半減期:約2.06年)

半減期の10倍の期間を経過すれば、減衰や排泄により放射能はゼロに近くなるが、290日前の福島第一原発事故直後に口に入ったセシウム137は、生物学的半減期の4倍、セシウム134は3倍から1.5倍しか経過しておらず、なお放射線を出し続けている。

仮に毎日一定量の放射性セシウムを口にし、これを人体がカリウムとまったく同じに扱えば、放射性セシウムの量がカリウムに比して微量である間は、体内に吸収された放射性セシウムがカリウムに置き換わっていくと考えられる。

次の図は、生物学的半減期70日として、毎日6ベクレルずつ人体が吸収した場合の放射能の累積値。416日目辺りで599ベクレル程度となり、後はほぼ横ばいとなる。416日は、1年と50日。2012/4月末までは体内にある放射能は増加していくこととなる。

この先、食品の放射性セシウム汚染は広がっていくことは避けられない。セシウムを口にしても、できるだけカラダが取り込まないようにできないものだろうか。

植物は、セシウムとカリウムを区別できるようなのだ。「作物のセシウム吸収の条件は多様」に引用した渡部敏裕・北海道大大学院助教(植物栄養学)のサイトには、次のように記載されている。

「セシウムは同族元素であるカリウムやナトリウムとの正の相関はほとんどありません(どちらかといえば排他的関係)。セシウムの場合、葉と種子ともにカリウム無施肥の処理区で高い値を示します。つまり逆に言えば、カリウム施肥を十分に行うことでセシウムの蓄積は抑制できる可能性があります」

それなら、人体だって、カリウムを多く含む食品を摂れば、セシウムの吸収と蓄積を抑制できるのではないか。

カリウムは、食品に幅広く含まれており、特に野菜や果物、豆類等に多い。1日当たり2.5g、3g摂るのは容易だ。たとえば、100g中、納豆660mg、アボカド720mg、里芋560mg、鶏ささみ420mgといった具合だ。

通常の食生活をしていれば、カリウムが不足することはないはずだ。むしろ、放射性物質の混入を恐れるあまり、食生活が偏るほうがセシウムにつけ込まれる恐れが強い。

バナナも360mgと果物の中では、カリウムが多いほうだ。カリウムには放射性のものが一定割合含まれており、この点を捉えてバナナ1本食べた場合の被曝量をあげつらう向きがあるが、とんでもない議論だ。人体は、放射性カリウムとは、折り合いをつけている。

カリウムの不足を避ける一方で、放射性セシウムを口に入れないようにするということは、確かに難しい。結局、外国産の放射能汚染のない高カリウム食品、たとえばアボガドやバナナのようなものを食事の中に取り入れていくことしかなさそうだ。

腎臓の悪い人には、カリウムの取りすぎは禁物だという。なんでも、行き過ぎはよくないのだ。
posted by ZUKUNASHI at 00:04| Comment(0) | 内部被曝防止
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。