いくつかの市町村や事務組合が、焼却灰の処分に関連して汚泥や焼却灰の放射性物質の量を測定している。
松戸市東部クリーンセンターにおける、し尿処理施設の脱水汚泥の測定値。
し尿は、月1回か2か月に1回程度の収集だろうし、収集してから処理に要する時間もある。それに検出限界(50ベクレル)もあるから7/4採取分からは放射性物質が検出されなかったのだろう。だが、その後は測定のたびに増え、10/3採取分でピークを打っている。
京都府内の一部事務組合の2008/4のデータによると、脱水汚泥は、生し尿重量の3.7%程度になるから約30分の1だ。脱水汚泥からこの割合を使って逆算すれば、東部クリーンセンターに持ち込まれた9月の生し尿にはkg当たりセシウムが5.5ベクレル程度含まれていたことになる。
経口摂取してもすぐには排出されない分もあるだろうし、汗で体外に出る水分もあるから、それらを加味しても、放射性セシウムの経口摂取量は、飲食物の総量で見れば、kg当たり5.5ベクレル近くの水準になっていると見ていいのではなかろうか。
松戸市は、金町浄水場の江戸川をはさんだ反対側にある千葉県の浄水場から主として配水を受けており、千葉県水道局では東京都並みのモニタリングは行われていないが、6月、7月の水道水になお数ベクレルの放射性セシウムが含まれていたのだろうか。(もし、そうなら大変なことだ。)
水道水が主たる原因でないとすれば、食べ物が原因だが、まだコメは汚染されていない。野菜、肉や魚からの摂取が原因と見ざるを得ないが、食べ物の汚染は将来にわたって長く続く。
し尿汚泥に含まれる放射性物質の量の測定結果は、大変貴重なデータだ。脱水汚泥は、焼却処理されるから焼却灰の測定値でも変化はわかる。
おそらく地域によって、し尿に含まれる放射性物質の量はかなり違いが出るはずだ。宇都宮市は、9/20に採取した脱水汚泥の試料について、セシウム134を113ベクレル、同137を128ベクレル、計241ベクレル検出している。
月1回程度の頻度で継続的に測定している自治体は少ないが、そのうちの一つ相模原市の時系列データは次のようになっており、11/8採取分では少し減少しているが、なお高水準だ。
注目されるのは、セシウム137の濃度は変わらず、セシウム134の濃度が低下した分だけ全体の濃度が低くなっている点だ。相模原のし尿収集対象家庭は、安定的に一定量のセシウムを口にしていることになる。
それにしても、食べ物のうち何からセシウムを摂っているのだろう。以前に何度か掲げた食料需給表ベースの1日当たり食物摂取の設例で見てみると、コメが汚染されておらず、他に強く汚染されたものもないという前提では、1日の食べ物1kg当たり6.6ベクレル程度という想定を作ることはなかなか難しかったが、コメが20ベクレル程度の汚染なら簡単だ。
食品検査の検出限界も20ベクレル/kgと低いし、すべての食品についてデータがあるわけではないから、自分の食べているものの何の寄与が大きいのか突き止められない。いろいろな情報を得て、危険性の高いものを回避していくしかなさそうだ。
都内の某区では、学校給食に福島産米を使うことが明らかとなり、保護者の中にいろいろな動きが出ていると聞く。今年の東日本産のコメには少なからず汚染されているものがあると見なければならないと思っていたが、福島市のコメから630ベクレル検出された。コメの放射性セシウムの含有量が精米でkg当たり30ベクレルだとすると、ご飯1食80gとして2.4ベクレル摂取することになる。
(初出 2011/10/20 改訂 11/19)