いわき市内の汚染状況がよくわからない: ずくなしの冷や水

2011年10月05日

いわき市内の汚染状況がよくわからない

広大な市域を有し、北部が福島第一原発から30km圏に入るいわき市は、原発関連従事者の滞在などで旅館やアパートが埋まっているという。多くの人が集まるのは、福島第一原発から比較的近い地理的状況にあって空間放射線量が必ずしも高くないと見られていることのためだろう。

いわき市については、私が自治体の放射線量測定値を収集したときから他市町村に比べて相対的に低い値が出ており、いぶかしく思っていた。

栃木 塩谷町 0.334 _ 0.188
茨城 石岡市 0.332 _ 0.115
茨城 土浦市 0.33 _ 0.124
福島 いわき市 0.33 _ 0.08
岩手 平泉町 0.33 _ 0.27
茨城 鉾田市 0.323 _ 0.168

いわき市より南に離れたひたちなか市の空間線量率が下げていない、見方によっては上げているから、いわき市も線量率が上げている可能性がある。

改めてデータを調べると、いわき市は基本的に放射能測定に関しては県や国のデータを使うという姿勢のようだが、「保育所における空間放射線量のモニタリング結果」というデータが見つかった。市内の保育施設において、地表50cm地点の保育室と園庭中央の放射線量を測定したものだ。

次の図の赤い線は、このデータの直近の測定値を高いものの順に並べたものだ。黒い棒線は、前回測定値で、赤い線より下にある場合は直近の測定値が上昇、上にある場合は低下していることを示す。

最高値を記録したのは、7/13測定の桶売保育所の0.99μSv/h。8/5にはこれが0.41まで下がっており、除染が行われたのかもしれない。

2回目の測定で最も高いのは、7/27測定の久之浜保育所の0.62μSv/h。6/21測定の0.69μSv/hから少し下がっている。

測定個所全56箇所のうち、下げているのが36箇所、変わらず8箇所、上昇が12箇所で順調に線量率が下げているとは言い難いだろう。

このデータでは、1回目と2回目の測定日の時間的な開きがばらばらだ。次の図は、縦軸に測定日の間隔を取り、横軸に変化率をとったもの。40日近く経過しても、変わりないものもある。

降下した核種が分からないが、セシウム137と134が半々だとすれば、新たな降下がなければ40日も経てばそれなりに減衰するはずだ。

私が自治体の放射線量測定値を調べた際には、他の市町村のデータでも線量率が上がっている例はあったが、多くは小幅な上昇で測定誤差の範囲か、気象条件によるブレと見られる程度のものだった。

このデータでは、0.36→0.41、0.48→0.56、0.19→0.23、0.19→0.26、0.2→0.3のような例が見られ、場所によっては放射性物質の追加的な降下の影響があるものと見られる。相対的に線量率の高いところ、線量率が上がっているところを冒頭の図に保育所名を書き入れたが、内陸の桶売保育所を除くと、市域の中でも北寄りの海に近い辺りが相対的に高くなっている。

上の地図で久之浜に近い少し内陸に入ったところでは、個人が精度が高いと見られるガイガーカウンターで測定した屋外の空間線量率は、6/18、住居に近い道路上1mで0.62μSv/h、裏山に続く道路で同1.27μSv/hとなっており、いわき市全体では、汚染のバラツキがきわめて大きい。

もともと持ち運びできる測定器による測定値は、固定された測定器によるものに比べてブレが大きく、このことは国立がんセンター東病院の測定データでも言える。茨城県に比べて、福島県のモニタリングシステムはかなり劣っており、いわき市は、県と同じで今回の原発事故による放射能汚染の実態を低めに印象付けようと努めている疑いが捨てきれない。

いわき市は、7/25、子どもの被ばく限度の基準値を毎時0.3マイクロシーベルト、年間で1.58ミリシーベルトに設定すると発表した。市内全ての小中学校と幼稚園の校舎を夏休み中に高圧洗浄機で除染した後に放射線量を測定し、基準値を上回るところでは校庭の表土を除去する方針とのこと。

いわき市に関しては、2011/7中旬、軽トラックの荷台で「毎時1ミリシーベルト超」の高い放射線量率を検出したとするビデオ映像がネットに流れ話題となった。

8/11朝のNHKのニュースで、3月の小児甲状腺サーベイで福島県のいわき市の4歳児が35mSVの被曝と判定されたが、その情報が安全委員会のホームページから削除されたとの情報が流れたのだそうだ。THE NEWSによると、この4歳児の住所はいわき市北部ではないとのことだ。上の図にもあるように中部でも東側は空間線量率が高い。

市長は、ホットスポットになかなか足を踏み入れなかったという。福島県と福島県内自治体の公表するデータは、客観性に疑問がある。実態がわからないというのは、一番怖いことだ。

4/25、枝野官房長官は記者会見で、緊急時避難準備区域にいわき市が含まれなかった理由として「市から強い要望があった」と4/22の記者会見で説明したことに対し、渡辺敬夫市長から抗議を受け、4/25午前、電話で直接謝罪したことを明らかにした。

枝野氏は、いわき市が区域指定から外れたことについて「市の意向を忖度(そんたく)したものだった。避難区域から外れるのが期待されるという意向があったとは認識しているが、(市側との)十分な認識が共有されずに、誤解を招く発言になった」と発言を訂正した。

政府は8/9、原子力災害対策本部の会合で20km以遠の地域にある「緊急時避難準備区域」の一括解除の方針を決定した。対象は福島県南相馬市、田村市、広野町、楢葉町、川内村の5市町村。実際の解除は8月下旬から9月上旬に行われる見通しだ。

緊急時避難準備区域については、緊急時の避難準備や子供などの自主避難を呼びかけているが、5市町村は遅くとも9月上旬までに学校や医療機関の再開時期を明示した復旧計画を策定し、計画がそろい次第、政府は指定を解除し、住民の帰宅を実現させるとのこと。

福島第一原発から放出が続く毎時10億ベクレルの放射性物質の影響は、原発近隣市町村では決して無視できない。緊急時避難準備区域の解除で帰宅が可能になっても、これらの地域ではそれによる被曝増大のリスクが高いことは否定できないと思う。

なお、「自治体の測定した空間線量率の最高値の分布」の記事のいわき市分の数値を改訂した。地図の色分けも変更したが、変更後の方が連続性が自然だ。

2011/9/21、文部科学省がヨウ素131の土壌濃度マップを公表している。2011/6/14現在の濃度だが、福島第一原発より南部の沿岸部に高濃度地帯が見られ、いわき市の海岸部に当たる。いわき市は、小児の甲状腺の障害発生に備えて早く対策を講ずるべきだ。実態から目をそむけ続けるとそのツケは何倍にもなって取り返しがつかなくなる。

なお、ストロンチウムの測定についても、いわき市はなぜか測定箇所の選定から漏れており、自治体側のなんらかの意向が影響しているのではないか。
posted by ZUKUNASHI at 12:30| Comment(0) | 福島原発事故
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