被害額と復興 2: ずくなしの冷や水

2011年05月15日

被害額と復興 2

宮城県知事は、壊滅的な被害を受けた水産業の施設や漁船などを民間資金で復興するのは困難と判断し、国費で整備する「国有化」を進め、再生を目指す構想をまとめたという。将来的には施設を民間が買い取り、運営母体を株式会社化する計画とのこと。

気持ちはわからないでもないが、次々と国費負担に依存する構想や要望が出ていて、財政当局は警戒を強めているだろう。

財務省は、震災前には、OBを使って財政再建キャンペーンを張っていたが、震災復興で津波の引き潮のように国庫支出が増えていく事態に国際機関も動員し始めた。OECDが、日本は最終的に消費税率20%にならざるを得ないとの見解を示したのもそんな動きの一つだろう。

3/22閣議決定された2011年度第1次補正予算案の財政支出額は4兆0153億円、2次補正はさらに巨額に達すると菅総理が述べている。


23日に開かれた政府の復興構想会議の2回目の会合では、東日本大震災で大きな被害を受けた岩手、宮城、福島3県の知事や委員たちの間での復興財源を巡る意見の相違が浮かび上がった。一方、東京電力福島第1原発事故を抱える福島県は事故収束を最優先とするなど温度差も表面化した。

復興財源を巡っては、宮城県の村井嘉浩知事が「災害対策税」の導入を国に提言し、「今回、災害にあった地域以外の、今後の大きな災害にも使っていく」と提案。災害向けの「基金」で国民の共有財とする考え方だ。

しかし、岩手県の達増拓也知事は「財源論争」に反対の立場を表明。復興税は消費を低迷させると指摘し、終了後、記者団に「増税という話なら被災地にとっては非常に困る。被災地支援の動きにも悪影響だ」と断じた。

財源の担保を優先させるか、まず財政出動で復興を急ぐか−−。議論の対立は会合2回目にして早くも表面化し、「どのような復興を考えるかが先で、財源論は後ではないか」(他の委員)との意見が強まった。

一方、福島県の佐藤雄平知事は「(福島第1原発による)原子力災害が進行中で、まず10万人(の避難住民)が(家に)戻ることができていない。(工程表の)ステップ1と2を一日も早く実現してもらいたい」と語った。(2011年4月23日 21時10分毎日)

財源論や権限委譲論が先に来るというのは、やはり話の順序としてはおかしいし、岩手県知事の言うように被災地支援の動きにも悪影響は必至だ。宮城県知事の水産業等の「国有化」論は、災害復旧を全額国庫負担で行わせようという狙いだろう。

担い手が高齢化して新規の借金ができないというのはそのとおりだが、次の担い手もいない産業に国庫資金をふんだんに投じるほど今の日本には余裕がない。遠洋・沖合い漁業はすでに多額の負債を抱えていたはずだ。将来的な漁業の産業構造をどうするのか、業界は考えをもっているのだろうか。今回の被災地以外の将来的な被災地も対象とした災害対策税というのも論外だ。今は、日々の暮らしを賄うのに苦労している人が増えている。


日本大学の糸長浩司教授は、5/13、福岡市内で開催された「響みどりの会」などの主催による報告会で、飯舘村が原発から30キロ圏外ながら非常に強い放射線が観測された点に関し「政府は原発からの距離で対応を線引きしていたが、実際の計測データに基づいていればもっと有効な手を打てたはず。マスコミも『同情』『共感』を求める記事ばかりでなく世の中を動かす提言、情報を伝えるべきだ」と訴えた。

さらに「古里を離れたくないという気持ちは分かるが、そこでとどまってはいつまでも前向きになれない。避難を前提に生活を再建する方向に考え方を変えなければいけない」と強調。避難後の課題として「村が分散しても相互のネットワークを維持することが大切だ。避難先で集団農場を経営するなどして村民が集い、働き、コミュニケーションが取れる環境を作るべきだ」と提言した。(2011年5月15日 毎日地方版)

高濃度汚染地帯では、何十年も高い放射能が続くのだから「避難を前提に生活を再建する方向に考え方を変えるべき」との指摘は正しいと思う。高い放射能は、生活のすべての面で考慮されなければならず、何をするにも障害となる。政府は、財政負担の増加懸念や、地元自治体や住民のセンチメントに引きずられて、前向きな生活再建を後押しできていないと思う。
posted by ZUKUNASHI at 23:28| Comment(0) | 震災復興
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