
この円安は、かつての日本売りとも違い、最大の要因は日本の低金利にあるようです。
日本円でカネを調達し高金利国の通貨で運用して利鞘を稼ぐキャリートレードや個人投資家の外国為替証拠金取引(FX)やグローバルソブリンオープンに代表される外国債券投資信託残高の増加が円安の主要要因です。
輸出企業は円安が増益要因ですが、原料輸入企業でも最近は輸出比率も高いため円安が企業収益を圧迫し利益が吹き飛ぶと言うことは少なくなっています。
例えば2801キッコーマンは円安で大豆調達のコストが増えても海外の子会社や日本食品の輸出事業などで稼いだ外貨でコスト増を緩和できているようで、収益は落ち込んでいません。
外貨の運用先を求める外国人投資家にとっては、目下の円安状態は早晩円高への揺り戻しがあるとの前提に立てば日本株などの金融商品への資金投下のチャンスです。金融商品の固有の収益に加えて為替差益が得られると期待できるからです。
現に外国人投資家の日本株買いが継続していますが、円安がこの先一段と進行すると見られれば、既往の資金投下分を含めて外貨換算した場合に為替差損が大きくなりかねませんし、円安の行き過ぎ是正で急速に円高に振れた場合、企業収益悪化懸念が高まり、株価が下落し為替差益を帳消しにしかねません。
2005/12には12/12の120.85円から12/16には116.01円へ1週間の間に4円84銭も円高に振れていますし、2006/4には4/14の118.65円が5/17には109.16円へ9円49銭も動いています。
特に怖いのは、円高進行基調転換定着が明確化したとたんに、上の円安要因のうちキャリートレードや外国為替証拠金取引、さらには外貨預金等でいっせいに巻き戻しが始まり、円高の進行が昂進しかねないことです。
実際のところ、私は1ドル125円程度になれば雀の涙ほどとはいえ手持ちの米ドル預金を邦貨に換えて生活資金に充てるつもりです。
為替動向を読む上で当面注目すべき点がいくつか指摘されています。
(1) 7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)での円安に関する議論
対円でのユーロ高が特に顕著ですからこれまでも欧州の金融当局者から円安を牽制する発言が出ています。
一方、米国は経済が減速しているもののソフトランディング可能との楽観論が強まっていることから、当局者は巨額の財政赤字や貿易赤字のファイナンスを重視しているようで日米の金利差に基づく円安は「基調的な経済ファンダメンタルズに基づき、競争的市場で取引されている」ものとの立場です。
となると、日本の金融為替当局が円安是正に向けてなんらかのアクションをとらざるを得ないような状況にはならないと見られます。
(2) G7でのヘッジファンドに関する議論
時に一国の為替金融当局に戦いを挑むヘッジファンドは各国の為替金融当局にとってうるさい存在ですから、規制強化とまで行かなくても、活動状況報告義務の強化を図りたいとの気持でいるのは確かでしょう。
しかし、ヘッジファンドの本家とも言うべき大国がそう簡単に同調するとも思えず、ヘッジファンドのこの先の活動に影響するような結論が出てくることはないのでないかと思います。
(3) 日銀の金融政策決定会合
2/20-21の日銀金融政策決定会合での利上げはないとの見方が大勢のようです。仮に上げても微々たるもの、しるし程度にとどまらざるを得ないでしょうから、心理的な影響は否定できないにしても、一気に円高への巻き戻しが起きるとは考えられません。
(4) 日本企業の業績動向
私が毎日開示情報を眺めていて得た印象ですが、新興企業には下方修正、赤字転落が相次いでいますが、主力市場の各業種のトップ企業なり独自の地位を占める企業は増益基調を取り戻しています。
もちろん開示内容が市場の予想を下回り、株価が下押すものもありますがそれは一時的なものです。本業の利益や有価証券売却益を原資として、減損損失や早期退職募集による特別損失を埋める企業も見られます。
2007/3期決算の企業については、3月末にならないと最終的な業績が判明しませんが、原料高とはいえ製品の値上げが通った企業、価格競争力のある企業を中心に好決算が期待できるのではないでしょうか。
政府当局者は、まず企業に利益がたまり、そしてそれが次第に労働者の懐を潤すプロセスは機能しているとしています。私は今期の企業業績の改善が労働者の犠牲のもとに得られたという側面は否定しがたいと考えていますが、とにかく消費性向の高い階層の所得底上げを図らなければ景気回復の持続はありません。
(5) 外国人投資家の対内投資動向
規制緩和の停滞で外国人投資家が日本への投資をためらうとか、日本企業の業績回復が本物だと確認されない限り失望売りが出かねないとかいろいろ指摘されていますが、どれも一理あると思います。
金融の国際化がますます進展する中で、ヘッジファンドのオペレーションや為替動向による株価への影響は依然として大きいと思います。
ただ、粉飾決算や談合問題への社会的批判の高まりの中で、企業は本当の競争に取り組むことを余儀なくされています。過去の負の遺産を国民の税金投入でようやく解消できた大企業にはまだ学習効果が残っているはずだと思いますし、日本のビジネスエリートの力には希望を捨てていません。
それと、大きく円安に振れるほどに日本人が外国の金融資産を買い込む時代です。他の国の国民もカネが貯まればリスク分散の観点から日本の金融資産を買ってくるでしょう。長期的な流れは変わらないのではないかと見ています。
当面、円安傾向が125円程度まで緩やかに進行する限りは、現在のポートフォリオを維持してよいでしょうか。