2012/6までに公表された資料を用いており、福島第一原発事故後1年数か月経過するまでの間のデータだから、まだ急速に空間線量率が低下中の時期に当たる。関東の自治体の中には、学校や公園の空間線量率を可搬型測定器で計測して公表しているところが少なくなかったため、そのデータを使えば、市町村単位で平均的な空間線量率が推定できる。例えば、房総半島の丘陵部には規制庁マップでは0.1μSv/h超の部分はほとんど見られず、この分布はそのような市町村測定データを用いているものとみられる。
また、個人の測定データを使用したともされているが、個人の測定データは、使用機種、地上高、ベータ線検出の有無、測定時期によって差が生ずるためその活用は難しいものがある。図に0.05μSv/h未満の緑色の部分が表示されているが、これは市町村測定データと個人の測定データのどちらにも0.05μSv/h超の測定値が見当たらなかったために、0.05μSv/h未満の表象をしたものと推定される。

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例えば、上田、小諸近辺は0.05μSv/h未満に区分されており、福島第一原発事故前の水準を維持しているように見えるが、実態とのずれがある。北東北にも緑の部分が広がるが、これも実態とは乖離している。規制庁の設置したMPの測定値が低めに出ていることは周知のとおりであり、それが0.045μSv/hだからといって可搬型の測定器で測定した場合に同水準の値が出るわけではない。
この地図では、富山県、岐阜県、愛知県が全くの空白となっている。これらの県は独自の可搬型による線量率測定結果がないかないに等しい。富山県、岐阜県は汚染があるのだが、自治体は寝た子を起こさない選択をした。住民の独自測定の動きも鈍い。
関東の一部の自治体でも同じように対応したところもあり、そういうところはデータが乏しい。神奈川県の西部にきのこ園のある町があるがこのキノコ園の産物の放射能測定結果は結局見つからなかった。東京都、埼玉県の西部も住民の意識は低い。それが7年半経って人口動態指数のワースト上位進出という結果をもたらしたと言えるだろう。
地方は、自治体も個人もやはり貧しい。私設の連続測定装置の設置分布などを見れば明らかだ。これ以上自分らの不幸と向き合うのはつらい、見ないようにしよう。そういう地方の弱さ、弱みに行政や大企業が付け込んでいる実態を福島第一原発事故は改めて暴いた。
地域別には、北東北について乖離がありうるほか、長野県の小海線沿線はデータ不足。長野市周辺は規制庁マップでも0.1μSv/h超の部分があるがこの地図では表象されていない。
新潟県の下越地方についてはかなり実態を表している。高崎市や熊谷市の駅至近の場所についてコンクリート打設面を測定した結果は相対的に低かったが、熊谷駅のテラスの空間線量率は0.1μSv/h未満ではなかった。
相模原の南、平野部までこんなに高いか? 東京西部、埼玉西部はもう少し高いはずだ。明らかな過小評価とみられる。
地域別にみると、不整合な面が多いが、比較的狭い範囲、つまり同一データを使用している範囲では比較可能だと考える。ただ、7年半の時間経過でセシウムによるガンマ線は減少しているが、ウランの子孫核種によるビルドアップがあるのではないかとみられ、実際の空間線量率は相当変化していると考えざるをえない。
2018/9/26、避難放浪人さんからコメントが寄せられた記事を見て思い出した。管理人も市町村の測定結果をもとに地図を描いたのだった。東葛は0.4μSv/h超となっている。2011/3/21の夜、船橋市では市内全域で0.3μSv/hに設定したアラームが鳴り続けたという。

そしてデータの限界からキノコの測定値を使ったマップ作成に進んだのだった。
2013年11月22日
きのこが教える汚染地図 (最新版)

http://onodekita.sblo.jp/article/57016460.html