SPM分析の効用と限界: ずくなしの冷や水

2017年08月19日

SPM分析の効用と限界

SPM濃度の変化を追うことにより放射性物質濃度の場所的時間的な変化を知ることができるのではないかとの着想は一面で当たっていましたが、限界もあります。

@ ガス状の放射性物質は濃度を測定できない。
当然のことですが、これが良く示されたのは、2011/3/15早朝に神奈川県下を通り抜けたプルーム第一波です。

横浜市環境科学研究所(移転前)の3/15から3/22までの1時間ごとの空間線量率です。単位ナノグレイ/h。
3/15は、午前7時と12時にピークが出来ています。


しかし、磯子区のSPM濃度は、13時にピークを付けその後はほぼ横ばいです。


他の地域も同じようになっています。


一方、大気汚染測定に使用されたテープのセシウム測定結果は次のように町田で正午にピークを付け、その後急速に下がっています。


つまり、横浜市の東部について見ると、3/15の早朝の空間線量率のピーク時にはSPM濃度が高くなかったということになります。この早朝のプルームは放射性ヨウ素が多かったことが分かっており(大気汚染測定用ろ紙のセシウム濃度でもそうです)、この放射性ヨウ素は粒子状ではなく、気体状だったということです。

空間線量率が上がってきているが、SPM濃度に変化がない場合は、主として気体状の放射性物質が流れてきている。

A ガス状の放射性物質も時間の経過とともに粒子状に変化するためプルームが風で吹き払われない間は、SPM濃度が高水準を保つことがある。

次の図で、午前6時から7時頃にピークにはなっていませんが、濃度が大きく上昇しています。そして線量率のピークとなった13時頃を過ぎても濃度は横ばいになっています。

これはなぜでしょう。


一つには、希ガスが時間の経過とともに微粒子化し検出されたと考えられますし、2011/3/15のように気化した重金属が飛来した場合は、温度の低下に伴って気体状から粒子状に変わることがあるということによるものと考えられます。

キセノン133は5.248日の半減期で放射性でないセシウム133に変わります。5日前に生成したキセノン133が流れてくれば、その半分は既にセシウム133になっているわけで、それらは大気中を移動しつつより大きな塊になるでしょう。

原発事故では、その他の多様な短寿命の放射性物質が一斉に放出されます。これらの短寿命の放射性物質は大気中を移動しつつ崩壊を続けます。ガス状から粒子状になるものも多いはずです。

さらに、メルトスルーが生じるような高温ではほとんどの原子炉内の物質が気化する温度に達していますから、それらが放出当初は気体状でもすぐに冷やされて粒子状になるでしょう。

水酸化物などの化合物に変わっていけば、粒子は大きくなり重くなりますから浮遊粒子の濃度(重さ)は大きくなります。

大気汚染測定ステーションは、せいぜい地上2〜3mの高さで空気を取り入れています。一方プルームは地上千メートルの高さにまで達しています。

時間の経過とともに上空から壊変後の放射性物質が次々に降下してきます。

これらがSPM濃度高止まりの原因と考えられます。

空間線量率が上昇したのち、それが低下してもSPM濃度が高止まりしている間は放射性物質の灰が滞留していることを示す。重金属が多いから注意

3/16のSPM濃度の推移を見ると、3/16の午前0時頃をピークに濃度がゆっくりと低下しています。


これは西から風が吹き込み、滞留していた大気が東に押し流されたことによるものです。


高止まりしていたSPM濃度が下がり始めた場合、放出源とは別の方向から風が吹き出し、滞留している放射性物質を吹き払った可能性がある。大気中の放射性物質濃度は大きく下がる。

B SPM分析の利点は、ガンマ線源以外の線源の濃度をも反映することです。ガンマ線源がなくてアルファ線源とベータ線源だけが飛んでくるようなことは考えにくいのですが、2011/3/20に関東平野を襲ったプルームは、ガンマ線の線量率を大きくは押し上げなかったのにSPM濃度は高水準でした。

次の北関東2県の空間線量率は、3/20の午後に少し上げています。小幅な上げですが、茨城や宇都宮では3/20のSPM濃度は高水準だったのです。






特にこの現象が激しかったのは、2011/3/19から3/20にかけての北東北、道南地方でした。能代市では300μg/m3近くまで上がっています。


SPM濃度を押し上げる効果が顕著なのは、火山の噴煙。工場火災など。それ以外に
空間線量率が上がらないのにSPM濃度が大きく上がった場合は、ガンマ線を出さない放射性物質が飛来してきている可能性がある。

北東北のSPM濃度の上昇は、福島第一原発起源と見られ、燃料貯蔵プールや原子炉に大量に放水したためにそれ以前に生じていた粉塵が巻き上がったものと見られます。

空間線量率の変化と併せてSPMの分析をすれば、放射性物質の濃度そのものを示すものではなくとも、放射性物質とその崩壊後の灰の濃度の変化を知ることはできます。

そして、こんなに浮遊粒子状物質があれば、鼻血を出すことも、喉が痛くなることも当然だと考えるようになるでしょう。現実にはそれだけでは済まず、甲状腺異常や間質性肺炎や心筋梗塞が起こっているのです。

関連記事
2017年08月07日
西日本で福島第一原発事故の被害は他人事と考えていた皆さん お元気ですか?
2017年08月04日
福島第一原発からこのように吹き上げれば、650kmも数時間で飛びます
2017年08月02日
原発事故があったら避難しきれるものでないことを彼らは知っている
2017年07月31日
SPM分析の結論 露天の原子炉・燃料プールに放水するとすさまじい灰かぐら
2017年07月26日
青森県のSPM濃度上昇が大きかったが幼児の障害発生に関係があるんだろうか
2017年07月24日
原発事故が起きたら避難しろ? そんな無責任なことがよく言えますね
2017年07月23日
そらできた! これでも東海まででプルームは止まったと思えるかな?
2017年07月22日
次の原発苛酷事故では間髪を入れず避難する? そんなことできますかね? 無理ですよ
2017年07月22日
SPMの分析結果とキノコの教える汚染地図は整合するがSPEEDIの結果とは大きくかい離
2017年07月21日
プルームが最も広く広がったのは 2011/3/20のようだ
2017年07月21日
東北のSPM濃度の上昇は 3号機への放水強化の時期と重なる
2017年07月18日
SPM濃度と空間線量率の相関は低い だが放射性物質は微細なホコリとなって飛んだ
2017年07月11日
茨城北部の汚染はどうなんだろう
2017年06月01日
原発事故直後の避難は慎重に
2017年06月01日
東海第二で苛酷事故なら首都壊滅だったはず


以下の記事はアーカイブに収録(非公開)
2010年問題 S県東部に住めるのは人間じゃない人だけ
空は狭い 市原コスモ石油爆発事故
2017/8/9の午後東京湾の周りをSPMが回遊していた
そらまめ君のSPM濃度グラフへのリンク 北海道から山形県
そらまめ君のSPM濃度グラフへのリンク 福島県から千葉県
そらまめ君のSPM濃度グラフへのリンク 東京都から静岡県
そらまめ君のSPM濃度グラフへのリンク 北陸中部
そらまめ君のSPM濃度グラフへのリンク 近畿
そらまめ君のSPM濃度グラフへのリンク 中国四国
そらまめ君のSPM濃度グラフへのリンク 九州沖縄
ゴミ焼却場のホコリはこんなふうに飛ぶ
2017/8/14 九州北部の空間線量率が上昇
風の通り道というのは確かにある
SPMの飛んだ先の現地調査 船橋印内
SPM分析 SPMの高い日は2011/4以降も頻繁にあった
灰かぐら 周りに放水しただけであれだけ飛んだ
千葉市の人口動態悪化は長くかつ深刻なものになりそうだ
埼玉で難病が多発したわけ でも埼玉だけではない
SPM濃度と空間線量率の関係
横浜市の悲劇
2011/3/12から3/31 SPM濃度県別平均値の地域比較
SPM濃度分析グラフの読み方 U
SPM濃度分析グラフの読み方 T
SPMの分析 愛知県は空気が悪い
青森市・仙台市の空間線量率とSPM濃度
SPMの分析 大阪府
宮古島でこの濃度なら北米は相当高かったはず
宮古島で2011/3末、SPM濃度が上がっているわけだから台湾でも上がっただろう
2011/3 全国のSPM濃度 そらまめ君サイトから
SPMの分析 福井県
SPMの分析 沖縄県
SPMの分析 県別日平均値、測定ステーション別20日間の濃度累積値
SPMの分析 ホコリ高い北部九州にもプルームは来ている
SPMの分析 佐賀県
SPMの分析 環境数値DBの大気環境から日平均値の都市別最高値をグラフ化 北海道・東北・関東・中部・近畿・中国四国・九州
SPMの分析 環境数値DBの大気環境から日平均をグラフ化
SPMの分析 環境数値DBの大気環境から月間値・年間値データの一部をグラフ化
都道府県別 2011/3/12から3/31 日平均SPM濃度 (東日本)
SPM濃度が上がった後に空間線量率が上がることがある
SPMの分析 石川県
SPMの分析 静岡県
SPMの分析 三重県
SPMの分析 滋賀県
SPMの分析 群馬県
SPMの分析 東京都
SPMの分析 秋田県は福島第一原発3号機のホコリまみれになった?
SPMの分析 秋田県
SPMの分析 宮城県
新潟市内も汚染されている
岩手のSPM分析 北東北は大変なことになっていないか
青森のSPM分析 これはすごいや 盲点だった
SPMの分析 長野県
SPMの分析 鹿児島県 えらいものが出てきてしまった
札幌は2011/3/19にプルームが襲っていた
SPMの分析 島根県
SPMの分析 兵庫県
SPMの分析 岐阜県
SPMの分析 富山県
SPMの分析 新潟県
SPMの分析 山形県
SPM分析 栃木県
SPM分析 MPの空間線量率が上がらなくてもSPM濃度が上がればプルームが来ている
千葉県北部在住者は東海第二のベントでも被曝している SPMの分析 千葉県
原発苛酷事故なら避難も篭城も難しくなる SPMの分析で分かること 福島県
東海第二原発から粒子状放射性物質が大量に放出されていた 燃料棒の損傷はかなり大きいだろう
posted by ZUKUNASHI at 19:08| Comment(4) | 福島原発事故
この記事へのコメント
こんにちは
東海第二、千葉のspmの記事を踏むと
他の記事になってしまい見られません
Posted by ふくらん at 2017年07月14日 11:01
すみません SPM分析の関係記事は読む人も少ないので順次アーカイブに移しています。東京、埼玉、静岡などまだやらなければと思っていますが、とにかく手間がかかるので他の作業を先行しています。
Posted by ずくなし at 2017年07月14日 11:26
SPM、大変興味を持っておりました。
子供の夏休みに突入したため、時間に追われるような毎日です。

愛知東部のデータを見るのは初めてです。
じっくり見て一言コメントをしなければ、と思いつつなかなかできないうちに
アーカイブに入ってしまったのですね。

あの年の3月20日、朝から出かける予定でしたが
私はダウンして寝込んでいたことが、主人のメモでわかりました。
9時半〜12時すぎくらいまで、子どもと主人は大きな公園へ出かけてしまいました。
花粉症ですので、当時でも最低限しか窓やドアは開けませんでしたが、
20日の9時半までに影響はあったのではと思います。

頭痛が汚染の目安であると確信しました。
Posted by koton at 2017年08月03日 15:13
いつもありがとうございます。
空間線量率の他に、モニタリング指標となるものを見つけられた功績は大きいと思います。

SPMは、大気に放出されたガス、微粒子の濃度をモニタリングできるものですが、それらの中には放射性物質が必ずしも存在する訳ではないという、特性を理解していれば、効果は十分にあると思います。

例えば、PM2.5もその中に含まれていて、重金属であればそれが健康に影響していることは公知のことと思います。
そのような可能性が、SPMの濃度と空間線量率に完全な相関は見られないが、おおよそ推測可能となることは、大きな発見です。

相関は見られないとしておられますが、SPMの濃度分布と、きのこからの放射線量をマッピングしたものでは、視覚的に相関を見ることができるため、こちらの方が現実的かなと思ってしまします。それによって、むしろ空間線量率の方が実態に即していなかもしれない、というコペルニクス的転回を導いてしまう可能性を持って来たと言えるかもしれません。

SPM濃度分布の変化を見ることによって、ガス状または微粒子の大気中の動きを認識させてもらいました。これにより、ものすごい早い速度で伝播していくことが分かりましたので、事故の際には逃げても無意味ということになった訳ですね。
これは、屋内待機の方が有効と言えることとなります。また、吸気による影響を回避するためには、ガスマスクになってしまうことも分かりました。
現実的には防塵マスクN100が妥当なところでしょうか、防災対策も考え直す必要がありそうです。

SPEEDIの予測が当てにならないとすれば、SPM濃度が降雨、風による移動などにより濃度が低下するかどうかをモニターして、避難する?できる?ということになりますね。

もしかすると、ビッグデータ解析で、SPMの濃度と空間線量率にさらに相関があるものが見つかる日がくるかもしれませんね。そのような大きな転換を引き起こす可能性をみせていただいたように思います。
Posted by ささらほうさら at 2017年08月04日 00:14
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。