SPM分析の効用と限界: ずくなしの冷や水

2017年07月21日

SPM分析の効用と限界

SPM濃度の変化を追うことにより放射性物質濃度の場所的時間的な変化を知ることができるのではないかとの着想は一面で当たっていましたが、限界もあります。

@ ガス状の放射性物質は濃度を測定できない。
当然のことですが、これが良く示されたのは、2011/3/15早朝に神奈川県下を通り抜けたプルーム第一波です。

横浜市環境科学研究所(移転前)の3/15から3/22までの1時間ごとの空間線量率です。単位ナノグレイ/h。
3/15は、午前7時と12時にピークが出来ています。


しかし、磯子区のSPM濃度は、13時にピークを付けその後はほぼ横ばいです。


他の地域も同じようになっています。


一方、大気汚染測定に使用されたテープのセシウム測定結果は次のように町田で正午にピークを付け、その後急速に下がっています。


つまり、横浜市の東部について見ると、3/15の早朝の空間線量率のピーク時にはSPM濃度が高くなかったということになります。この早朝のプルームは放射性ヨウ素が多かったことが分かっており(大気汚染測定用ろ紙のセシウム濃度でもそうです)、この放射性ヨウ素は粒子状ではなく、気体状だったということです。

空間線量率が上がってきているが、SPM濃度に変化がない場合は、主として気体状の放射性物質が流れてきている。

A ガス状の放射性物質も時間の経過とともに粒子状に変化するためプルームが風で吹き払われない間は、SPM濃度が高水準を保つことがある。

次の図で、午前6時から7時頃にピークにはなっていませんが、濃度が大きく上昇しています。そして線量率のピークとなった13時頃を過ぎても濃度は横ばいになっています。

これはなぜでしょう。


一つには、希ガスが時間の経過とともに微粒子化し検出されたと考えられますし、2011/3/15のように気化した重金属が飛来した場合は、温度の低下に伴って気体状から粒子状に変わることがあるということによるものと考えられます。

キセノン133は5.248日の半減期で放射性でないセシウム133に変わります。5日前に生成したキセノン133が流れてくれば、その半分は既にセシウム133になっているわけで、それらは大気中を移動しつつより大きな塊になるでしょう。

原発事故では、その他の多様な短寿命の放射性物質が一斉に放出されます。これらの短寿命の放射性物質は大気中を移動しつつ崩壊を続けます。ガス状から粒子状になるものも多いはずです。

さらに、メルトスルーが生じるような高温ではほとんどの原子炉内の物質が気化する温度に達していますから、それらが放出当初は気体状でもすぐに冷やされて粒子状になるでしょう。

水酸化物などの化合物に変わっていけば、粒子は大きくなり重くなりますから浮遊粒子の濃度(重さ)は大きくなります。

大気汚染測定ステーションは、せいぜい地上2〜3mの高さで空気を取り入れています。一方プルームは地上千メートルの高さにまで達しています。

時間の経過とともに上空から壊変後の放射性物質が次々に降下してきます。

これらがSPM濃度高止まりの原因と考えられます。

空間線量率が上昇したのち、それが低下してもSPM濃度が高止まりしている間は放射性物質の灰が滞留していることを示す。重金属が多いから注意

3/16のSPM濃度の推移を見ると、3/16の午前0時頃をピークに濃度がゆっくりと低下しています。


これは西から風が吹き込み、滞留していた大気が東に押し流されたことによるものです。


高止まりしていたSPM濃度が下がり始めた場合、放出源とは別の方向から風が吹き出し、滞留している放射性物質を吹き払った可能性がある。大気中の放射性物質濃度は大きく下がる。

B SPM分析の利点は、ガンマ線源以外の線源の濃度をも反映することです。ガンマ線源がなくてアルファ線源とベータ線源だけが飛んでくるようなことは考えにくいのですが、2011/3/20に関東平野を襲ったプルームは、ガンマ線の線量率を大きくは押し上げなかったのにSPM濃度は高水準でした。

次の北関東2県の空間線量率は、3/20の午後に少し上げています。小幅な上げですが、茨城や宇都宮では3/20のSPM濃度は高水準だったのです。






特にこの現象が激しかったのは、2011/3/19から3/20にかけての北東北、道南地方でした。能代市では300μg/m3近くまで上がっています。


SPM濃度を押し上げる効果が顕著なのは、火山の噴煙。工場火災など。それ以外に
空間線量率が上がらないのにSPM濃度が大きく上がった場合は、ガンマ線を出さない放射性物質が飛来してきている可能性がある。

北東北のSPM濃度の上昇は、福島第一原発起源と見られ、燃料貯蔵プールや原子炉に大量に放水したためにそれ以前に生じていた粉塵が巻き上がったものと見られます。

空間線量率の変化と併せてSPMの分析をすれば、放射性物質の濃度そのものを示すものではなくとも、放射性物質とその崩壊後の灰の濃度の変化を知ることはできます。

そして、こんなに浮遊粒子状物質があれば、鼻血を出すことも、喉が痛くなることも当然だと考えるようになるでしょう。現実にはそれだけでは済まず、甲状腺異常や間質性肺炎や心筋梗塞が起こっているのです。


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posted by ZUKUNASHI at 18:15| Comment(2) | 福島原発事故
この記事へのコメント
こんにちは
東海第二、千葉のspmの記事を踏むと
他の記事になってしまい見られません
Posted by ふくらん at 2017年07月14日 11:01
すみません SPM分析の関係記事は読む人も少ないので順次アーカイブに移しています。東京、埼玉、静岡などまだやらなければと思っていますが、とにかく手間がかかるので他の作業を先行しています。
Posted by ずくなし at 2017年07月14日 11:26
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