鳥取県は、「大部分がラジウム、或いはラジウムが崩壊してできる鉛やビスマスなど天然核種であり、原子炉生成物質を疑うセシウム134 などは含まれていませんでした」としている。

上の表で崩壊系列の頭にあるウラン238やトリウム232のベクレル数が分かれば、その後に出てくる子孫核種との存在比率が分かるのだが、これら二つについては測定データがない。
この廃棄物は、人形峠のウラン鉱脈を掘った際に生じた掘削土を持ち出したものではあるまいか。
そうだと仮定すると、掘削土のウラン濃度を参照してみればよい。
人形峠製レンガの安全性
「原料掘削土にはわずかですがウランが含まれていることから、レンガ製品の放射線等の測定を行い、以下のデータが得られています。
○ウラン濃度;0.57ベクレル/グラム」
これはアルファ線の測定結果なのだろうが、そのような記述はなく、ウラン238だけなのか、ウラン234も含めて測っているのかも明らかでない。
しかも、これは「レンガ製品の放射線等の測定」結果だから、アルファ線を測ったのなら、最も表面にあるウランが出したアルファ線を測っているに過ぎない。
このウラン濃度を1kg当りに直せば570ベクレル/kgとなるが、表面より内側のウランが出すアルファ線は測定できないから「レンガ製品の表面の放射線等の測定」というべきであり、kg当りの表示は意味がない。
また、「レンガ表面の放射線量率は平均0.22マイクロシーベルト/時であり、花崗岩(みかげ石、高いもので0.2マイクロシーベルト/時)程度の値です。」とも記載されている。
管理人が、徘徊途中ウランレンガを積上げたものではないかと見られる塀を見かけ、SOEKSを近づけて測定したら0.2μSv/hあった。アルファ線を検出しない簡易な測定器でも差は生じた。
2017/7/9、レンガの壁をMAZURで測定した。紙1枚挟んで60cpmだから0.18μSv/h、紙を挟まなかったらこれより下がってしまった。鉛直面の測定は難しい。
2016年10月21日
ポロポロ崩れるもろいレンガにご注意
また鳥取県の公表資料に戻って考えると、ウラン238の測定結果はないが、ウラン238が崩壊してできる娘核種のトリウム234のベクレル数は書かれている。
ウラン238の半減期は44億年だが、トリウム234の半減期は24.1日。トリウム234が毎秒これだけ崩壊していれば、ほぼ同じ数だけウラン238が毎秒崩壊してトリウム234の崩壊して減少した分を埋めなければ、トリウム234は枯渇して崩壊数が激減してしまう。
つまりこの廃棄物1kg中にあるウラン238の毎秒の崩壊数はトリウム234に近い値になっているはずだ。
レンガ1個は2.5kgとされるから、仮にこの廃棄物でレンガを作ったら、レンガ1個の中でトリウム234が77,000〜62,000ベクレル/kgの2.5倍、192,500〜155,000ベクレルの放射線を出していることになるし、ウランもほぼ同じ数のアルファ線を出していることになる。
もちろんレンガは焼き固められているからアルファ線は表面にあるアルファ線源からしか外部には届かない。
しかし、これが経年変化でボロボロ崩れ始めたとき、粉末化したレンガの材料からは猛烈なアルファ線が出ていることになる。
155,000ベクレル÷2500g=62ベクレル/g
原子力機構のサイトにある「ウラン濃度;0.57ベクレル/グラム」と二桁違うが、固形物の表面を測った場合とそれを粉末化して自己遮蔽がないようにした場合とで100倍の違いはありうるだろう。
だいぶ分かってきた。ウラン238がベクレル数で100あれば、トリウム234もほぼ同じベクレル数があり、以下の子孫核種では鳥取県の測定結果と同じような形でベクレル数が変化すると考えてよいだろう。
途中でベクレル数がほぼ半減しているのは、ひとつはウラン234とその次のトリウム230の半減期が極めて長いために滞留が生ずるからだろうし、もう一つにはラドンを経由してラドンの次の核種が散逸してしまうためと考えてよいだろう。ウランレンガが経年変化でボロボロになるのもラドンを経由することが原因の一つかも知れない。
上に述べたことをイメージで示すと次のとおりだ。トリウム234が崩壊してすべてがPa234mになり、その99.84%がウラン234に
、残りの0.16%がPa234になる。Pa234mの半減期が1.2分、Pa234が6.75時間。Pa234は無視してよいほどの割合だが、なぜかPa234mの崩壊数がトリウム234よりも大幅に少なくなっている。測定誤差だろうか。

なお、プロトアクチニウムは強い放射性と猛毒性を有し、プルトニウムのアルファ線同等の強発癌性を有するとされている。
上に書いてきたところからすれば、CTBT高崎放射性核種観測所の粒子状放射性核種の観測結果でビスマス214の大気中の濃度が時間を追って上昇していることは重大な意味を持つ。
「CTBT高崎放射性核種観測所の粒子状放射性核種の観測結果」(2016年12月21日時点)による9月から11月までの最新データを加えて作成したビスマス214の大気中濃度のグラフ。

ビスマス214が増えていることは、とりもなおさず、ウラン238以降の系列にある放射性核種が増えていることにほかならない。
ビスマス214以前のラジウムも増えている。ラジウムはカルシウムと似た性質を有するとされ、骨に入れば長く残留するという。
既に日本産の食品からは多くのものでラジウムが検出されているとの情報もある。食品によっては数ベクレルだから過去に計測された水準を数桁上回ることになる。
各都県が測定した定時降下物からもラジウム226は検出されている。群馬県では2013/3と2014/5に平米当り3.1から2.4ベクレル検出された。

ラジウムなどの厳密な検出は手間がかかり難しいという。他の府県では降下していない、飛んでいないということはない。検出するだけの分析力がないか測定方法の限界で検出限界未満となっているだけだろうと考えられる。
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次の資料を目にしたが、難しくて分からない。
北陸地域アイソトープ研究会誌 第3号
2001年−75−利用技術
γ線スペクトル解析による天然ウランと劣化ウランの判別