海外の出来事はマスメディアでかく伝えられる: ずくなしの冷や水

2016年02月10日

海外の出来事はマスメディアでかく伝えられる

管理人は、シリア情勢について現地情報を極力広く見るようにしていますが、日本のマスメディアの報道に違和感を感じることがしばしばあります。以下、新聞報道を引用します。下線と番号は管理人。

朝日2016/2/9
「最悪、シリア難民60万人国境に」トルコ副首相が懸念
 内戦が続くシリアで、北部アレッポ制圧を目指すアサド政権軍の猛攻により新たに多数の避難民が北隣のトルコ国境へ押し寄せている問題@で、トルコのクルトゥルムシュ副首相は8日会見し、「近く起こりうる最悪のシナリオは、60万人近い避難民がトルコ国境に来ること」Aと述べた。
 クルトゥルムシュ氏は、アレッポ北方のトルコ国境近くのシリア領内には避難民用のキャンプが開設され、すでに約7万7千人が生活していると説明。「我々の目標は(アレッポからの)避難民をシリア領内のキャンプで受け入れてもらい、そこへ(トルコから)支援物資を提供することだ」Bと述べた。
 さらに、アレッポ北方のシリア領の人口約100万人も「(戦闘拡大で)いつトルコへ向かってもおかしくない。C(アサド政権)軍の動きを注視している」と懸念を表明した。

※ 共同2016/2/8 23:32
シリア避難民、国境に殺到
政権軍攻勢で3万人
【カイロ共同】シリア内戦で、ロシア軍の空爆支援を受けたアサド政権軍がシリア北部で攻勢を強め戦闘が激化、新たに数万人の民間人がトルコ国境に押し寄せているD。トルコは国境を閉鎖しており、多くの避難民がシリア側で立ち往生E。政権軍は猛攻を続ける構えで、避難民はさらに増える恐れがあるF。
 トルコのダウトオール首相は8日、ドイツのメルケル首相と会談後の記者会見で、トルコ南部キリスの国境付近に集まった避難民は約3万人に上ると指摘、「われわれは新たな悲劇に直面している」と述べた。
 トルコメディアなどによると、避難民は7万人に増えるとみられる。

ロイター.co.jp ‏@Reuters_co_jp 2016/2/29
シリアでの大量難民発生はロシアの空爆原因、独首相が批判 http://bit.ly/1TajyyH
[アンカラ 8日 ロイター] - ドイツのメルケル首相は8日、ロシアによるシリア空爆で数万人の民間人が避難を余儀なくされているGと批判するとともに、空爆は12月にロシアが調印した国連安全保障理事会決議に反すると指摘した。
首相は当地訪問中、アサド政権を支援するロシアによる空爆でシリアの都市アレッポが受けている苦しみを目の当たりにして「衝撃を受けた」Hとし、トルコのダウトオール首相と行った記者会見で「いま一度、ロシアが支持した12月18日の国連安保理決議2254を振り返らなければならない。この決議で安保理は、全勢力に対して民間人および民間施設への攻撃、特に空爆など無差別の兵器使用を速やかに中止するよう求めているI」と述べた。
一方トルコには、国内のシリア難民の状況改善に向け直ちに段階を踏むよう促しJ、欧州連合(EU)が表明している総額30億ユーロの支援が遅滞なく支払われる必要があると述べた。

2015/12/3
TEHRAN (FNA)- UK airstrikes against ISIL in Syria would only aggravate the suffering of local civilians, Labour Party’s leader Jeremy Corbyn said Wednesday.

・・・引用終わり・・・

シリア・トルコ国境にあるシリア避難民の露営地と見られる場所のテント数の推移を見てみます。


以下、引用した衛星画像は、Google Earthから時間スライサーの機能を用いて取得したキャプチャー画像を時系列に並べています。黄色の線がシリア・トルコ国境線です。



2011/1/26 シリア内戦始まる。次の画像では畑の中に白いものが見えますが、不整形で農業資材のようです。



2012/11/4、露営用のテントが見え始めます。


2013/3/20、テントが半年で急に増えています。



2014/8/25、オバマ大統領は、米軍によるシリア上空での偵察飛行を承認。
2014/8/28、ISILはシリア空軍基地を制圧時に捕らえていたシリア国軍兵士500人のうち、160名を処刑したと発表

2014/8/4、テントがある場所が急拡大。


2015/9/30、ロシア空軍機空爆開始

A 避難民の露営用テントが増えたのは、ISISなどのテロリストが支配地域を拡大していた時期です。

B トルコに避難したシリア人もいますが、トルコは受け入れたシリア避難民の人権等に配慮していません。
2015年12月06日 ええっー 「テロリストのリーダーはエルドアン、バクダーディとアルカエダは召使、アルヌスラはトルコの命令を実行している」

C 上の画像で分かるように、農村地帯では国境は徒歩で通過可能です。国境線に沿って露営テントが並びます。トルコ領に入ればより安全なはずですが、露営者はそれをためらっています。なぜでしょう。
2016年02月08日 トルコってこんな国 エクアドルでエルドアンのボデーガードが演説中に誹謗の声を上げた女性たちに暴行
2015年11月28日 シリア情勢 41 トルコは暴力の国 撃ち合いが日常なのか

D アルカエダやISISは、米国が産み育ててきました。サウジやイスラエルも協力していますが、主導は米国です。米国は世界の警察官でも何でもありません。米国人の中に、米国人は殺人民族だと言う人も現れています。

E 下にリンクしたWikipediaの年表を見れは分かるように、シリアの政権は2015/8には崩壊寸前でした。シリアが外国の支援を求めて応じたのかロシアです。2015/9末から2016/2で4ヶ月強経過しますが、形勢が逆転し、シリア政府勢力が失地を次々と回復しています。

F これに慌てたのがアレッポ北部に傭兵などを送り込んでいたサウジやトルコです。この地域では、アルヌスラ戦線の支配が強かったのですが、崩壊状態となりつつあります。アレッポが陥落すれば次はISISの首都とみなされるラッカです。

G 米国と英国は、ラッカへシリア政府軍が進攻し、機密情報を知るISIS幹部がシリアに捕らわれて悪事がばれることを恐れ、英国人幹部を殺害しました。

H イラクは、米国頼りにならずと自国軍と人民軍でISISに攻勢をかけ西部地域を奪還し、北部のモーサルに進攻しようとしています。米国はどっちの味方なのだと、はっきりと疑念を呈する人が増えています。

I 米国がロシアにアレッポ北部への攻撃を止めるよう求めています。なぜでしょう。米国は前述のようにISISをサポートしています。基本的にロシアの攻撃を憎く思っています。アレッポ北部で活動していたアルヌスラなどを支援していた国は米国に強く働きかけたと見られます。

J サウジが地上軍の派遣の意図を表明していますが、自国だけでは目立ちすぎるということでしょう、他のイスラム諸国を巻き込み、米国主導の有志国連合がOKすればとの留保つきです。

K サウジの動きと同期して、米国の働きかけによると推察されるアレッポへの地上軍進攻を非難する欧州などの動きが出ています。上に引用したメルケルのトルコでの発言は、その典型です。

L ドイツは大変計算高く、移民労働者を安価な労働力として使っています。今回も、そんな期待もあったのでしょう、難民受け入れを表明しましたが、その流入数が手に負えないほどに大きく、EU内部で混乱が生じました。

M メルケルらは、トルコにカネを渡してシリア難民をトルコ領内に留めるよう求めましたが、トルコは人権無視の政権です。彼らは、シリア難民を人質にとって金儲けをすることを覚えましたし、EUへの加盟促進などの梃子としても使おうとしています。

N トルコは、盗掘された石油の搬入をロシア空軍によって封じられ、物資やテロリスト戦闘員のシリア国内への送り込みも困難になっています。上の新聞記事のBはトルコの願望を伝えています。反シリア政府勢力が「人道援助」を和平交渉の前提条件としたのと背景は同じです。

O シリアの現地から伝えられる画像を見ると、これまで戦闘の舞台となったところは、到底一般市民が住めるような状況ではありません。
2015年12月09日 建築中? いや破壊されたんですね 日本なら大火災です



これらの建物の破壊、荒廃がいつ生じたのか、テロリストの進攻時か、シリア政府勢力の逆襲時かは分かりませんが、いずれにしても住民は早い時期に避難しています。テロリストは、住宅を奪い、協力しない住民を殺害しています。テロリストと共生できる住民は限られます。

P 最近のロシア空軍のテロリスト拠点の爆撃は、市民からの情報提供によるものが多くなっているそうです。確かに空爆地点はなんでここがと思えるほどに巧妙にカムフラージュされており、ロシア空軍はシリア軍からの情報を多面的に吟味、確認して爆撃先を決めています。空爆による市民の犠牲が多いのは米軍の空爆であり、英軍の空爆です。

Q 上に引用した新聞報道についてコメントします。
@ 「アサド政権軍の猛攻により新たに多数の避難民が北隣のトルコ国境へ押し寄せている問題」と既知のこととして扱っていますが、既報があったのでしょうか。避難民でしょうか、それともテロリストがトルコに逃げ込もうとしているのか、朝日新聞はどうやって確認したのでしょう。

A 「近く起こりうる最悪のシナリオは、60万人近い避難民がトルコ国境に来ること」、これは避難民を人質にしているトルコの副首相の発言です。

B 「トルコ国境近くのシリア領内には避難民用のキャンプが開設され、すでに約7万7千人が生活している」避難民用のキャンプとは、上で見たように畑です。水や汚染物処理の施設が整っているようには見えません。一部ソーラー付きの住宅もありますが、数としては微々たるものです。この発言部分は、トルコが避難民を自国領内に入れる考えはないことを示す点で重要です。

C シリア人口2,200万人強。ラタキアなど一部テロリストの危険がなくなった地域も出てきています。交通の便も悪いでしょうからトルコ国境付近の人はそのような地域に行けるかどうかという問題はありますが、100万人生ずるか疑問なしとしません。トルコがテロリストの支援を止めれば避難民が生ずるのを止めることができるのです。

D、E、F この部分は、避難民が空港で立ち往生するような感じで書かれていますが、基本的に移動は困難なわけですし、避難民の多くはトルコに入れば安全を確保できるとは考えていないでしょう。

G メルケルはご都合主義です。「ロシアによるシリア空爆で数万人の民間人が避難を余儀なくされている」面がないとは言いませんが、悲劇の原因は米国が作ったアルカイダ、ISISです。ドイツも米国に追随して一枚噛んでいます。「ロシアによる空爆でシリアの都市アレッポが受けている苦しみを目の当たりにして『衝撃を受けた』」メルケルはアレッポに行ったのでしょうか。記事にあるとおりに述べたのかどうか分かりませんが。

I 「全勢力に対して民間人および民間施設への攻撃、特に空爆など無差別の兵器使用を速やかに中止するよう求めている」ことを強調するのであれば、米国の空爆で多くの市民が巻き添えを食っていることに触れない、それを非難しないのは方手落ちです。

J 「国内のシリア難民の状況改善に向け直ちに段階を踏むよう促し」たとありますが、このトルコとの取引は欧州側が一杯食わされたのです。EUはカネだけ取られる、シリア難民にはなんのメリットもない取引です。欧州内の混乱で悪魔との取引にハマってしまいました。欧州首脳の人権問題に対する真意のほどが窺えます。

上に引用した新聞報道は、米国主導のプロパガンダ路線にしっかりと乗っています。そうでなければ、イスタンブールやカイロで取材はできないということなのでしょう。ネットで調べると、既成マスコミの報じるところとは別の姿が見えてくる。今はそれが可能になりました。

ウィキペディア シリア騒乱

2015年12月05日 シリア情勢 50 シリア人難民はトルコ国境に追い詰められて露営している
posted by ZUKUNASHI at 13:13| Comment(0) | 国際・政治
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