ロシア空軍の空爆状況の報道が少なくなっている。シリアの反政府勢力と連携してISISの拠点を攻撃しているとの情報があるが、イラク国境に近いシリア側でISISの物資補給や人員の移動を止めるべく偵察活動とトラックの車列などを爆撃しているとされ、それによってイラク政府軍のISISとの戦いが有利に進められているとイラク軍が述べている。
ISISを地域から根こそぎ追い出すのは難しいらしい。ISIS戦闘員も多くはシリア人、イラク人で家族持ちのものもいる。地域に入り込めば識別は困難だ。幹部については、シリア政府軍やこれと協働する勢力は顔と名前を把握しているようだ。ISIS側の戦死者をチェックしていることもあるし、イラクのラマディでは逃げ遅れたISIS幹部が難民の中に紛れ込んでいたところを認識され、捕虜になったものがいる。
シリアのマダヤで餓死者続出という情報が流されたが、ロシアはUNとは別に人道援助を行っている。この飢餓問題は、ISISの戦闘員が人道支援物資を高値で住民に売りつけるという問題があったらしい。シリア政府軍が包囲していたわけでシリア政府の責任はもちろんあるが、別に砂漠のど真ん中の町ではない。
食料や生活物資の不足はあっただろうが、飢餓で死ぬような状況ではなかったのではないか。この情報は、サウジがメディアに流させたとされ、アルジャジーラなどは一役も二役も買っている。
この件で日本人のツイートを少し見てみたが、残念ながらこの先フォローしたいと思うようなツイートは少なかった。自分で調べるしかない。
このサウジアラビアは、今大変な窮地にある。石油価格の低迷で収入が激減。財政逼迫。一方で支出は多い。ISISに資金援助、武器弾薬に傭兵も送り込んでいる。イエメンとも戦争中。貧しい小国だから簡単にやれると踏んだのだろうがここにはイランが付いている。そしてイエメンの若者主体の兵士の士気は高い。撃ち落したサウジのヘリコプターからはずしたと見られる部品を使ってロケット砲を発射している。
シーク派の聖職者の処刑を契機にテヘランのサウジ大使館が攻撃され、両国間の緊張が高まったが、サウジはイランと本格戦争を始める気はないだろうというのが専門家の見方だ。
サウジは、米国や英国から高価な武器を購入しているが、自国でそれを使いこなすことができないとされる。サウジのイエメン攻撃の司令部には英軍と米軍の兵士が詰めているという。そんな実態があるがゆえに、英国では野党からサウジへの武器輸出は国際法違反と非難されている。
サウジは、スンニ派が主流だが、イスラム世界では支持を失っている。2015/12/15、サウジが主導してイスラム教国34カ国によって結成された「イスラム軍事連合」は、根回し不足で新聞報道で初めて知ったという国が出てくるお粗末さだった。
一方、イランはイラクとの関係も改善され、核問題に関する経済制裁措置も解除されて国際的な力も回復しつつある。サウジとロシア、イランの間でシェアを巡る石油の価格競争が熾烈さを増しているが、これまで輸出のなかったイランがサウジより圧倒的に有利だ。
サウジは、オペックでも支配力を失いつつある。そして、米英も、有力な武器売却先としてカネのためにはサウジをむげにできないが、英国内でのサウジの残虐性に対する批判も強く、英米はサウジと距離を置かざるを得ない状況になりつつある。ロシアにつけけ込まれかねない。
ISISは、米国がロシアの目があるために従来のような支援ができなくなり、トルコ経由の石油の密輸出もロシアにインフラを破壊され、資金源が枯渇している。戦闘員の賃金は半分に切り下げられたともいう。
イスラエルも有力なスポンサーと見られているが、サウジの肩代わりはできない。湾岸産油国も同じ。
ISISはシリアで追い詰められ、戦死者、投降者多数。イラクも政府軍と民間軍が米国がむしろ妨害しているとの認識でロシアから武器を供与され、本気でISISを攻撃。劣勢は明確になっている。
そこでISISはどうするか。首領のバクダーデイはリビアに逃亡したとされる。そしてISISの一部勢力はすでにリビアでサリンガス材料などを強奪。一部の地域で攻撃を行っている。
リビアは、自力での対応は困難と見て、軍関係者がロシアの援助を望む旨を表明している。
ISISは、一時、サウジを攻撃すると表明したりしたが、これはサウジの差し金で口先だけだろう。イスラエルを攻撃すると表明したこともあるが、これも同じ。シリアで負傷した戦闘員などをゴラン高原のイスラエル野戦病院に運びこんでいるのに、攻撃などするわけがない。
RTが2016/1/19に伝えたところでは、中将Gadi-Eizenkot氏は、テルアビブ大学国際安全保障問題研究所(INSS)の会議で、ISISはシリア南部のヨルダンとイスラエル国境に進攻してくるだろうとの見通しを示している。
イスラエル軍の見通しなら、そのとおりにことが運ぶ可能性も高い。とりあえず、ISISをシリア国境に接したヨルダンとイスラエルに避難撤退させるという計画でもあるのだろうか。シリア国内に残ればシリア政府軍とヒズボラが戦闘員を殲滅するまで戦うだろう。
それによって戦闘員の逃げ場を確保するという構想かもしれない。
2016年01月20日
ISISはどこへ行く
posted by ZUKUNASHI at 01:41| Comment(0)
| 国際・政治
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