キセノンじゃなくて、セシウム、ヨウ素でしょう? という声が聞こえるようです。キセノンは気体だし。
ごもっともです。でもヨウ素は気体でも流れています。粒子状のヨウ素やセシウムは気体状のものと流れ方が違うのかも知れません。
でも、各地で1時間エアーサンプリングした結果ではいろいろなものが混じって捕集されています。気体をサンプリングした例は少ないですが。私達が吸気による内部被曝を考える場合に、飛び方に大きな違いがあると考える必要はないと思います。
半減期の短い核種は、飛びながら壊変を続け、別の物質に変わっていきます。キセノンは、セシウムに変わります。キセノン133の半減期は5.2日、126時間です。
例えば、3/14の正午に原子炉から放出されたキセノンが3/15の正午に関東のある地点に届いたとします。24時間経過していますから、当初放出されたキセノン133の12.4%がセシウム133に変わっています。

原子炉から遠く到達までに時間がかかるところでは、半減期の短い放射性物質の壊変が進み、プルーム全体としての放射能は減衰すると考えられます。
ですが、放射性物質とそれが壊変してできた物質の多くは重金属です。中でも、セシウムは不整脈や心臓停止を起すことが知られています。
キセノン133の減衰曲線を見ると、だいたい1時間で0.5%程度セシウム133に変わります。関東平野にキセノンが滞留した間もそれらはどんどんセシウムに変わり、おそらくは多くが地表に落ちたと見られます。
事故直後のキセノンの放射能は大きなものがありました。次は海外の研究機関が推定した福島第一原発の原子炉内の放射性物質在庫量の見積もりです。
これがいつ、どれだけ放出されたかは分かりません。ですが、気体のキセノンは隙間を通って真っ先に漏洩したでしょう。

大気中のキセノン濃度が高かった地域は、もちろんいろいろな放射性物質による吸気被曝がありますし、キセノンが崩壊した後のセシウムの沈着具合によって、農作物を汚染します。
数量的な比較ができないので確たることは言えませんが、放射性セシウムの濃厚汚染地帯とされる地域と相対的に濃厚汚染はなかったとされる地域の物質としてのセシウム濃度を測定した場合、濃厚汚染地帯を上回るセシウムが土壌に含まれる地域もあるのではないかと危惧しています。
そういうところでは、農作物に放射性セシウムと放射性でないセシウムとが含まれ、狭心症や心筋梗塞の原因となりうることになります。
今なお、突然死、急死が絶えません。農作物の放射能測定結果は下がっているはずなのにそのような状態が続くということは、私達が気付いていない原因がありうるということではないでしょうか。