当初民間人の犠牲が出たと発表したNGOを名乗る欧州の団体もありましたが、ロシアの攻撃開始前に発表がなされており、ロシア側からその点を突かれ、以後は沈黙しています。
ロシア側は攻撃は3〜4ヶ月続くとしており、ロシアのピンポイント攻撃に恐れをなした戦闘員が多数逃げ出したというのは事実でしょう。これまでの有志国連合による空爆はなんだったのでしょうか。
イラクは、自国内のISISの掃討をロシアに依頼することを検討しています。ロシアの戦果を見た上でとしていますが、すでにロシアに協力しており、10/6にはロシアがカスピ海から発射した26発の巡航ミサイルの領空通過を容認しています。
興味深いのは、アフガニスタンで活動していた国境なき医師団が米軍によるおそらくは意図的な病院への爆撃を強く非難し、独立調査委員会設置を求め、西側諸国に対すると同時にロシアにも要請したことです。
ISISは、その創設を米国の議員、イスラエルが主導したとされており、ISISの幹部が負傷したときはイスラエルの病院で治療を受けているとの指摘があります。
活動資金は、サウジ、湾岸産油国、イスラエルから流れていると言われています。特に大きな資金を出しているのがサウジと見られます。ISISの宣伝写真を見るとパレードでピカピカの日本製と見られるトラックの車列に驚かされます。ISISは、戦闘員に対してきちんと給料を支払い、外国人傭兵も多かったとされています。
米国と同盟国は、しきりにロシアをけん制していますが、その理由は論理的ではありません。次の図は、タイムス紙に掲載されたものを縮小し筆者が強調を加えたものです。シリア国内の勢力別の支配地域を示していますが、シリア政府軍、Rebelつまり反政府軍、ISIS、クルドに分かれています。Rebelとあるのは、自由シリア軍とも呼ばれるようですが、米国はこれを支持しておりロシアはこの自由シリア軍を攻撃しているのでそれを止めろといっているのです。

実際には、自由シリア軍とISISの区別がどう付けられるのかは、報道を見てもよく分かりません。ロシアのラブロフは、自由シリア軍は「幽霊」だとしています。
上に見たようにISISの成り立ちやその背後関係を考えれば、自由シリア軍とISISは一つのものの二面を表しているように見えます。
ケリーは、2015/10/7ラブロフとの電話会談で、シリア政権を支援することはISISの立場を強めることにしかならない、スポンサーがより多くの武器とカネをつぎ込むからだ、と述べています。米国が、ISISのスポンサーを知っているなら、そのスポンサーに資金や武器の提供を止めさせるのがISIS退治の早道です。
空爆に関しては、ロシアの軍事力の高度化には目を見張ります。戦闘機の性能という面ではロシアが米国に勝っています。中国も間もなく参戦の見込みです。スホイのコピー戦闘機を持っています。
問題は、いつ地上戦になるかです。空爆でISISが追い詰められ、大規模な地上戦なしで勢力が消失するのか、それとも最後は地上戦で最終的な掃討を狙うのか。地上戦は、シリア政府軍が主に担い、ロシアなどが援護するかたちになるのかもしれません。
イラクが公式にISIS掃討をロシアに依頼すれば、形勢は決定的になるでしょう。ISISの幹部は家族をイラクの住民居住区に避難させたとも伝えられています。
逃亡するには、周辺国に入り込むしかありませんが、北はトルコ、東はイラク、南はヨルダン、西はレバノンとイスラエルです。どこがかくまってくれるでしょう。
米国は、ウソがばれて窮地に陥っています。シリア政府打倒で進んできた戦争屋が次にどんな手を打つか、すでにロシア側を攻撃しろとの声も出ているようです。偶発的な衝突が拡大することもありえます。
米国軍が国境なき医師団の病院を爆撃したのがどのような意図によるものかは分かりません。一時はアフガニスタン政府の依頼でやったとも責任逃れしていましたが、誤爆ではないと筆者は考えます。米国は、外交、軍事の失敗でその政策が混迷しています。正気でなくなっているのなら、次に何をするかはまったく分かりません。
日本の自衛隊の出番が意外と早く来るのかも知れません。米軍の兵站で守備に就く、まさか地上軍の一員に投入されることはないと思いますが。
シリア情勢は、日本のマスコミではほとんど報道されていません。とても面白い現象だと思いますがすべてそうなのですね。福島第一原発事故による健康被害が報道されないのも同じです。ネットがなければまったく知るすべがなかった国内、国外の動きがリアルタイムで把握できるようになっています。