福島第一原発事故は鉄塔倒壊で外部電源を喪失したのか: ずくなしの冷や水

2015年09月12日

福島第一原発事故は鉄塔倒壊で外部電源を喪失したのか

筆者は、福島第一原発の事故後の変容を調べていて、大きな誤解をしていたことに気付きました。

勝手な思い込み、誤解だったのかも知れませんが、F1が外部電源を喪失したのは、鉄塔が倒壊したためと理解していたのです。受電用の鉄塔が倒壊し、受電できなくなった。倒壊した鉄塔の代替ルート構築には時間がかかる・・・。

F1につながる送電ルートは、筆者が知るだけで4つあります。改めて倒壊した鉄塔を特定しようとしましたが、見つかりません。次の事業主体の資料で長者原から5、6号機につながる送電ルートの脇に小型の鉄塔があることにようやく気付きました。

福島第一原子力発電所内外の電気設備の被害状況等に係る記録に関する報告を踏まえた対応について(指示)に対する追加報告について
(鉄塔倒壊に関わる福島第一原子力発電所内の盛土の崩壊原因)
平成24 年2月17日 東京電力株式会社 から転載


Google Earthから 2009/11/15時点。倒れたのは、「夜の森線No27」ですが、場所を探すと次の図の赤丸の地点です。この図は2009/11/15時点ですからまだ健在です。このルートの外側にはより高い大きな鉄塔の送電ルートがあり、どちらも5、6号機につながっています。


次の図で言うと、左側にある鉄塔の右下に見える小さな鉄塔です。


大きさはだいぶ違います。次の画像は最近時点ですから倒壊した鉄塔はもちろん見えませんが、そのひとつ西側にあった小型の鉄塔が見えています。


次の画像は、2011/3/18時点ですから、問題の鉄塔は倒れたままです。画像で見るとずいぶん小さいです。


次の画像は最近時点のもので、倒壊した鉄塔は見当たりません。5、6号機のすぐ西にある小型の鉄塔はすでに電線が撤去されているようです。


今、5、6号機は外部電源で冷却しています。小型鉄塔の送電ラインがなくても外部電源の利用は可能なのですね。それならば、なぜ事故後速やかに外部電源の受電確保ができなかったのでしょう。

事故後何日目かに鉄塔に作業員が登って電線の付け替えを行っていたのは覚えています。スイッチ一つで配電ルートが変更できるとは考えませんが、少なくとも作業員がのぼっていた鉄塔は倒壊した送電ラインのものではありません。

外部電源を喪失した主因は、鉄塔1基の倒壊ではなく、構内の送配電設備があちこちで壊れた、地震や津波でこれらが使用不能になったことなのではないでしょうか。

非常用電源が失われ、外部電源の使用の道も断たれたのは、ともに地震、津波に対する備えがなつていなかったということだと考えます。

電力事業者が発電所構内に設置した鉄塔まで倒壊してしまうという事態は、地盤が悪かったからなどという弁解を容れる余地のないものと考えますが。

福島第一原発の送電系統を調べたら次の資料が見つかりました。
福島第一原子力発電所と他の発電所との比較検討
平成23年6月24日 原子力安全・保安院

次は、この資料に掲載されていた福島第一原発の送電ルートです。


これで分かりました。5、6号機につながる送電ルートは2系統。高い鉄塔のルートは送電のみ500kv、つまり受電不可です。低いほうが66kvで起動用、つまり受電用です。この66kvのラインは、F1構内で3、4号機につながる送電塔の系から分電しています。送電塔の下部に低電圧用と見られる部分があります。



次の図の黄色の円で囲んだ部分に66kvのラインの鉄塔があります。赤で囲んだのは275kvのラインで3、4号機につながっています。


この図の黄色の小さい円よりも少し上にある66kvのラインの鉄塔です。倒壊した鉄塔の整理に合わせて送電線は撤去されたようです。



原子力安全・保安院の上記資料には、次のように書いてあります。

•強い地震動による新福島変電所の遮断器等変電設備の損傷で、外部電源のうち福島第一原子力発電所1〜4号機への275kV2系統4回線の送電と、5,6号機への66kV1系統2回線の送電が止まった

•敷地内の受電設備のうち、1、2号機の超高圧開閉所は、地震動により遮断器が損傷し受電不可となり、3、4号機の超高圧開閉所は、津波による制御盤の水没により受電不可となった。
•5,6号機の起動用開閉所に接続する送電鉄塔1本(#27鉄塔)が地震動により損傷し、受電不可となった。

ここには恐ろしいことが書いてあります。地震で変電所の設備が損傷し、原発に送電できなくなったのです。5、6号機に通じる500kvのラインがどうだったかは書かれていませんが、このラインは原発からの送電専用です。

しかも、F1構内でも1〜4号機の超高圧開閉所が損傷したり、水没して受電不可となったのです。これだけ障害箇所が多いと大車輪で復旧に当たったとしても何日も時間がかかります。

鉄塔が倒壊しなくても結果は同じだったのです。

ここで最初に書いた筆者の記憶は、勝手な思い込みであることが確認できました。

ですが、筆者にはまだ疑問が残っています。上の図で東電原子力線66kvというラインが南側にあります。東北電力の富岡変電所につながっています。構内では、工事用変電所につながっていると記されていますが、構内の中心部に近いところまで鉄塔が残っています。黄色い小さな円の場所です。


電線も確認できます。これは構外です。


東電は新福島変電所の機器が損傷し、送電不可となったときに、なぜこの送電ラインの活用を図らなかったのでしょう。1〜4号機の超高圧開閉所が損傷していたために、外部電源を導入しても使えなかったのか、それとも原発がいつ爆発するか危険極まりない状況で配電ルートの設置など手がつけられないということだったのでしょうか。

この記事に掲げた画像は、出典の記載があるものを除き、Google EarthとStreet Viewによるスクリーンショットです。

(初出2015/9/11 追記修正 9/12)
posted by ZUKUNASHI at 11:05| Comment(0) | 福島原発事故
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