「福島第一原発作業員日誌」を読む: ずくなしの冷や水

2015年08月31日

「福島第一原発作業員日誌」を読む

★阿修羅掲示板に魑魅魍魎男(ちみもうりょうおとこ)氏が2014年1月13日に投稿した「磐城相馬さんの福島第一原発作業員日誌」の記事で「福島第一原発作業員日誌」を知った。

福島第一原発3号機関連の作業の実態とこれに従事する作業員の生活実態が日々の日記という形で綴られており、通読に時間がかかったが勉強になった。

内容のポイントは、上の阿修羅の投稿をご参照。魑魅魍魎男氏はよく読んでおられる。

おそらく、福島第一原発内で作業に従事した方の記録としては、第一級の歴史的価値のある資料だと思う。記述は正確で文章は読みやすい。

福島県内で福島第一原発事故を体験した方の体験「『ある自主避難者の証言』〜4歳の子供とふたりで、今年1月に福島中通りから新発田市に自主避難してきているお母さんのお話〜」とともに、極めて貴重な資料だと思う。

構内作業従事者の過酷な労働環境、雇用条件などについて断片的に伝えられていたことが、ほとんど正しいことが分かる。

ゼネコンや重機会社が、職員を交代制でF1構内に送り込んでいることは知っていたが、事務系の職員も動員されているとの記述があり、2012年春の段階ですでに始まっていたようだから、今は動員対象も広がっているだろう。

3号機の爆発で、周辺に落下した燃料やガレキを重機でどこかに埋めたというのも確かなことが分かる。

3号機タービン建屋屋上での作業の場面が何度も出てくるが、真上から見る航空写真から受ける印象とは違い、ガレキの山だというのは今も変わらないのではないか。

「避難所」や「3号機西側の草地」などの場所が今一つ分かりにくく、他の情報との参照が難しいのは残念。

一部引用

 元請会社は、ゼネコン大手の『大日建設』。僕たちが現場で所属するのは、二次会社(一次下請け)の『田中興業』 。僕たちが3ヵ月の臨時工として契約をしたのは、三次会社(二次下請け、孫請け)の『マーフ』。大日建設はここまでを管理している。
 しかし、実際、僕たちは、その下の原発専門人夫出し会社『飯塚エンジニアリング』(四次会社、三次下請け、曾孫請け)の、さらに下の人夫出し会社『パボタン』(五次会社、四次下請け、玄孫請け)から派遣されていて、日当もパボタンから受け取るらしい。
 山本君が「現場では絶対にパボタンの名前を出さないようにしてください。あくまで田中興業の作業員として働きますから」と、何度も念押ししていた。僕たちはイリーガルな存在なのだろうか?

 出発の準備をする。
 APD、作業者証、ガラスバッジ(内バッジ)を下着の胸ポケットに入れる。軍足を2枚重ね着し(これで三重)、タイベックとテープで留める。綿手袋の上からゴム手袋を二重につけ(これで三重)タイベックとテープで留める。綿帽を被り、全面マスクを装着したら、バンドでしっかり固定し、空気漏れがないか確認し、タイベックとテープで留める。もう一つのガラスバッジ(外バッジ)を首からさげる。
 所要時間は約5分。全面マスクのテーピング(面貼り)にかなりの時間を要する。
 最後に、操作室で装備チェックを受ける。
 このとき、JV社員は、タイベックに穴が開いていないか、テーピングがしっかりなされているか、APDを身につけているか等をチェックする。内部被曝してはいけないので、全面マスクの装着具合を特に念入りにチェックする。
 確認が終わったら、専用のチェックシートに、確認者が作業者の氏名と所属会社(ここでは田中興業。マーフではない)を記入し、責任の所在をはっきりさせるためサインをする。
・・・全面マスクに空気漏れがあるとそこから放射性物質が入り込み内部被曝する。細心の注意が必要とされるところ。

 隣の4号機も酷い。こちらは原子炉建屋全体がゆがんでいて、今にも崩れ落ちそうだ。去年からいる同僚の話によると、最近まで巨大クケーンで建物を吊っていたらしい。

 田中興業の作業員たちのいちばんの不満は、無駄な作業が多すぎること。作業の計画と指示がデタラメというか行き当たりばったりのため、線量ばかり喰って仕事が全然はかどらない。 (中略)
 日々浴びている線量から計算すると、3号機で働ける期間は2ヵ月程度。ひっぱっても3ヵ月が限界だ。その限られた時間で最大限の仕事をして帰りたいと、作業員たちは考えている。 それなのに、言われたとおりに作業してミスばかり犯し、被曝量だけが上がっていく。
本当にやりきれない。

 昇降階段からの往復時間は約10秒。それで800マイクロシーベルト以上ということは、 毎時に換算すると、約30万マイクロシーベルト(300ミリシーベルト)になる。  恐ろしい数値だ。1時間立ってたら、確実に癌か白血病になる。

 チャコールフィルター付きの全面マスクを必要とする現場では、六十代以上の人を入れてはいけないと思う。富士山の頂上で走り回るようなものだから、お年寄りには無理だ。子作りの終わった三十代と四十代に限定するべきだ。
・・・いかにきつい作業環境かが分かる。

一部引用終わり

この日誌を読んでハッピー@Happy11311氏について次のように感じた。
同氏は、福島第一原発収束作業協力企業の作業員とされているが、この日誌によれば作業員は二人1組での行動が鉄則。単独行動が可能なのは、JVの職員や東電の職員に限られ、彼らが単独で行動する場面がこの日誌にも描かれている。協力企業は持ち場が決まっているから、その幹部社員であってもツイッターで予告して構内好きなところに行けるなどということはありえないだろう。ハッピー@Happy11311氏は、東電の情報担当員と断言する人もいたが、今では筆者もそれを確信。2015/8/2に共同通信が報じた空中撮影の動画は強い関心を集めたが、彼のツイートを確認するとまったく触れられていない。

福島第一原発作業員日誌によると、F1構内作業従事者や除染作業従事者の出入りが活発なこと、60歳前後の年配層従事者の割合も低くないことがわかる。次の統計データは、そのような状況が続いていることを示すと考えられる。

福島県の自治体は、県外から流入した除染作業員などの県内での住民登録を推進しているとされている。

2015/1〜7合計 福島県年齢階層別の対県外転出入差し引き。左男、右女。
posted by ZUKUNASHI at 13:42| Comment(4) | 福島原発事故
この記事へのコメント
今日の放射能に引用されているTokaiama氏のTWについてですが
>いわき放射能市民測定室「たらちね」のデータは全く信用できない
とありますが、メーカーのHPを確認する限り、(AT1320Aについてです)
スペックシートには
137Cs   3.7...1·106 Bq/l (Bq/kg)
134Cs   3...1·105 Bq/l (Bq/kg)
の記載があります。

たらちねの記載には
検出下限
Cs137 7ベクレル/L(kg)
Cs134 6ベクレル/L(kg)
とありますので、「信用出来ない」とまで言い切るのはちとやり過ぎであり、言いがかりに限りなく近いかと思われます。
Tokaiama氏のTWには刮目すべきものもありますが、言いがかりも数多く見られ、十分に吟味の後、掲載しないと、誹謗中傷に力を貸してしまうことにもなりかねないかと、危惧します。
Posted by STOMKK at 2015年08月29日 16:14
東海アマ氏の表現の適否はあるかもしれませんが、「微量線源を測定してデータを見せていただきたい」と提案しているわけですので、たらちね側がなんらかの対応をすれば済むことではないかと思います。
たらちねは、ストロンチウムの測定で注目されています。
Posted by ずくなし at 2015年08月29日 17:04
おっしゃることはわかります。
ですが、
「いわき放射能市民測定室「たらちね」のデータは全く信用できない」と言い切ってしまっていますので、これは誹謗中傷に当たるかと思います。

冒頭にこう書いてしまえば、「いわき放射能市民測定室「たらちね」のデータは全く信用できない」と言う部分がひとり歩きすることになりますので、東海アマ氏の表現は科学的でもなく、ただの誹謗中傷に過ぎないものに成り下がってしまっていると考えます。
Posted by STOMKK at 2015年08月29日 17:18
すみません。論点がずれました。
東海アマ氏の表現云々ではなく、
何の根拠もなく、彼の独断でメーカースペックを無視して提示された
「いわき放射能市民測定室「たらちね」のデータは全く信用できない」
と言う同氏の発言をずくなしさんのHPで広めてしまうことに危惧します。
と言うことです。

メーカースペックを(たらちねHPではそれよりも甘く表示されています)信用出来ない!と言い切ってしまうのならば、この問題は全ての測定室に当てはまり、東海アマ氏自身の測定も信用出来ない、と言うことになってしまいます。
Posted by STOMKK at 2015年08月29日 17:37
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