まず、静岡県内の放射性物質の沈着状況については、静岡大学の小山真人氏が詳しい調査を行っています。次の2枚は同氏が学会で発表した資料から転載させてもらいました。
1枚目は測定値そのまま、2枚目は自然放射能を除去した後の上乗せ分とされています。

2枚目の地図で見ると、上乗せ分はわずかだと言えると思います。それでも人口動態が悪化したのは、初期吸気被曝が大きかったためでしょうか。

しかし、前回掲げた空間線量率のグラフを見るとそんなに強いプルームが長時間居座ったというふうには見えません。

筆者はむしろ別の要因があるのではないかとの疑いを持ちます。例えば2011/5/11のピークなどです。静岡県内では場所により兼ねて低線量の被曝が繰り返されており、そこに低線量とは言え上乗せがあったことにより健康障害が多発しているという仮説です。
静岡県内を地域区分してグループごとに出生と死亡の動向を調べました。地域区分は、御前崎を境にして海沿いの比較的平坦な地域を西方向に一つ@、時計回りに山間部を一つA、御前崎の東側の海沿いで一つB、富士山南側を一つC、そして伊豆半島の西側Dと東側Eです。

次はこの6つのグループごとに12ヶ月移動平均の千人当り出生率と死亡率を計算したものです。死亡率では、福島第一原発事故のあった2011/3(横軸目盛りの7)が移動平均に算入されて間もなく伊豆半島の東側の死亡率が急伸し始めます。あまり変化がなかったのは山間部です。
@とCは死亡率の上昇が続きましたが、ここに来て小康状態です。Bは当初の上がり方はそれほど大きくなく横ばいからじりじりと上げています。

一方、出生率は伊豆半島東側が激しい変動を示し、西側も同様です。BとCは低下傾向が続いています。@は横ばいで推移しましたが、ここに来て低下傾向が強まっています。

総合して言えば、伊豆半島を除けば、Cが最も悪く、次いでB、@のように見えますが、上の線量率地図を参照すると、特にCが強い汚染となっているわけではありませんし、B、@も同じ程度です。
それなのに上のグラフのように差が出始めているのはなぜなのでしょう。伊豆半島の東側を除けばほぼ全域で小幅な同じ程度の線量率の上乗せがあっただけなのです。
他の要因に原因を求めなければならないのでしょう。
次は、BとCの移動平均出生率死亡率の実数です。Cの変化が顕著です。太平洋ベルト地帯で工業化の先頭を走ってきたこの地域も、世代交代の時期に差し掛かり、人口動態の悪化が見られるようになったと言うだけのことかもしれません。人口も減っていますから、若い世代が流出しているのかもしれません。

それだけのことであれば良いのですが。筆者は、ストップ!浜岡原発で見た次のシミュレーション図が印象に残っているのです。ドカンと行った場合だけでなく、日常的にこの方向に流れていた、流れているのではないかとの懸念が打ち消せません。

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原発問題2013-06-10
イラストレーター若野桂先生、
「浜岡原発近隣病院の乳幼児死亡率が30%」と
(いろいろな意味で)仰天情報をツィート
http://togetter.com/li/132881
「「原発廃止で失業したらどうしてくれる?」
みたいな事言って怒る人がいるけれど、
自分の仕事が他人の命まで脅かすと知っても、
浜岡原発の近隣の病院での乳幼児死亡率=30%(世界平均=4.5%)と
聞いても、それでもその金で良い暮らしをしたいのか?
そういう考えが原発を増やしたのじゃないか?」
twitter.com/katsura_moshino/status/66515958470160384